価値ある事業を未来につなげる。初実現の「後継者公募」に込めた想いに迫る。
この記事では、2021年に初めて実現した、事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」上の取り組み「後継者公募」について紹介します。
今回は、ビジネス開発を担う木戸亮介さんにインタビューを行い、後継者公募が実現に至るまでの背景や、今後のビジョンについて話を聞きました。
※2022年6月7日、「ビズリーチ・サクシード」は、サービス名を「M&Aサクシード」に変更しました。
※撮影時のみマスクを外しています。
プロフィール
木戸 亮介/Kido Ryosuke
2012年、大阪市立大学を卒業後、株式会社三井住友銀行へ入行。関西の法人営業部にて中小・中堅企業や地方公共団体等を担当した後、東京の本店営業部にてインフラセクションに異動。大企業の融資取引を中心に、事業承継案件にも複数件携わる。 2018年3月、株式会社ビズリーチに入社し、「ビズリーチ・サクシード」の立ち上げに参画。現在は、「ビズリーチ・サクシード」を運営する株式会社M&Aサクシードのビジネス開発グループにて、新サービス開発のプロジェクトを担当。
経営者にとって、M&Aを当たり前の選択肢の一つにしたい。
──はじめに、今回初めて実現した「後継者公募」とはどのようなものなのか、簡単に説明をお願いします。
M&A業界においては、譲渡企業は、「自身に関する情報を一般公開しない」という暗黙の前提があり、基本的に匿名で譲り受け企業を探す慣習があります。
では、なぜ今回、譲渡側の企業様が実名をオープンにして譲り受け企業を公募する後継者公募をご提案したかというと、まず1つ目の理由は、当時、第三者承継を検討されていた臨海荘様がスピード感を求めていたからです。
昨年7月の後半、最初に私が先方にお話をお伺いした時に、「来月、良い相手が見つからなかったら廃業せざるを得ないかもしれない」というお話を聞き、一日でも早くお相手を探す必要があると考えました。
もう1つの理由は、今回、臨海荘様が「情報をオープンにしても問題ないですよ」とおっしゃってくださったからです。通常のような匿名での募集の場合、伏せなければいけない情報が非常に多く、どうしても臨海荘様の魅力を100%伝えきれない形で譲り受け企業を探さないといけませんが、今回ご提案させていただいた後継者公募という形であれば、臨海荘様のことを魅力に感じてくださる譲り受け企業が見つかると考えました。
──M&A業界において、今回のような取り組みはとても珍しいケースであると感じました。
はい、とてもレアなケースですね。一般的に、譲渡企業が自社の情報を伏せて譲渡先を探す理由は、「社員に知られたら不安にさせてしまうから」「金融機関や取引先等との関係性が悪化してしまうかもしれないから」というものです。日本では、会社を第三者に譲渡することに対するマイナスのイメージが、まだまだ根強いことも理由としてあります。
私たちとしては、そうした価値観を変えていきたいという想いがあり、今回、初めて譲渡企業側主体の公募に取り組みました。
例えばですが、「ビズリーチ」が転職市場を可視化することで業界に大きなインパクトを与え、今では多くのビジネスパーソンにとって、転職はキャリアについて考えるうえでの当たり前の選択肢の一つになり始めていると思っています。
それと同じように、世の中の経営者にとって、M&Aを当たり前の選択肢の一つにしたい。ビズリーチが実現してきた「雇用の流動化」のように、サクシードでは「資本の流動化」を促進していきたい。そう考えています。
──今回、初めて譲渡企業側主体の公募を実施するにあたって、事業部内ではどのような話し合いがありましたか?
2018年から、譲り受け企業様が社名を名乗る公募はこれまでに何回もやってきましたが、今回のような譲渡企業様主体のケースはありませんでした。当時から事業部内で「いつか機会があれば実現したいですね。」と話しており、今回、臨海荘様とお話しするなかでご提案させていただいたという運びです。
成約事例を増やしながら、日本の産業に大きなインパクトを与えていく。
──第1弾の結果について教えてください。
業界内では異例のスピードで成約に至りました。8月17日に公募を開始して、3ヶ月の募集期間を設けていたのですが、公募開始当日にすぐに複数の企業様から応募がありました。応募を受けて、その数日後には社長様同士のオンラインでの顔合わせの場を設け、結果的に、9月末には株式譲渡契約が締結されました。
通常のケースと大きく異なる点は、応募者が、はじめから臨海荘様の魅力を知ったうえで応募してやり取りを進めていくので、コミュニケーションの精度が非常に高いことです。実際に、譲渡先企業様からは、臨海荘様の写真を見て、また、これまでのストーリーを読んで、ぴんときてすぐに応募したとおっしゃっていました。
匿名だと、100%の形で魅力を伝えるのが難しいですが、今回は、公募記事で臨海荘様の魅力を表現できたのが良かったです。臨海荘様の皆さんも、魅力を理解してくださる譲り受け企業様が見つかって、本当に安心されていました。
──大切な会社・事業だからこそ、誰に譲るかは、とても大切な選択になりますよね。続いて、11月には、第2弾となる後継者公募の募集が始まりましたね。
業界全体を見ても、譲渡企業主体の公募は事例がほとんどなく、不安に思っていた方も多いと思うのですが、第1弾の実積が、NPO法人CIC英語幼児園様の肩を押すきっかけとなりました。
もともと、「入園した子どもたちのためにも、絶対に良い譲り受け先を見つけたい。」という想いをお持ちでしたので、公募の実施を判断するために必要な情報が揃ってからの意思決定は、とてもスピーディーでした。
今回、第1弾、第2弾の後継者公募が連続で実現しましたが、こうした事例を増やしていくことによって、先ほどもお伝えしたように、M&Aを経営における当たり前の選択肢の一つとして普及させていきたいと思っています。
会社や事業を第三者に譲渡するという発想自体を持っていない方もまだまだ多いですが、そうした方々に気付きと選択肢を与えられるよう、これからも「ビズリーチ・サクシード」を通して、新しい成約事例を次々と生み出していきたいです。
──成約事例が増えていき、そうした流れが加速していくことは、日本のマクロ経済にも大きなインパクトを与えていくと思います。
私たちは、「価値ある事業を未来につなげる」というミッションを掲げており、ここで言う価値の定義は様々です。黒字であることだけが価値というわけではなく、それぞれの会社や事業は、創業来から培ってきた技術やノウハウ、顧客との繋がり、そして業界のサプライチェーンやその地域における雇用といった大切な役割を担っており、だからこそ私たちは、そうした価値ある事業をM&Aを通して未来につなげていきたいと考えています。
資本力のある企業から投資を受けることで事業成長を更に加速させることができたり、異業種の企業とM&Aをすることで思いもよらなかった着想から新しいサービスが誕生する等、その意味でM&Aは、純粋な足し算ではなく掛け算であり、そこから新しい価値が生み出されていきます。そうした積み重ねが、日本の産業に大きなインパクトを与えていくと、私たちは信じています。
──本日は、ありがとうございました!
こちらこそ、ありがとうございました!
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この記事の執筆担当者
松本 侃士/Matsumoto Tsuyoshi
1991年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。2014年、音楽メディア企業に新卒入社し、音楽雑誌・ウェブサイトの編集や、採用などを経験。2018年、株式会社ビズリーチへ編集者として入社。現在は、ビジョナル株式会社の社長室で、Visionalグループ全体の採用マーケティング施策を担当している。
「All Visional」Twitterアカウントは、こちら。