河野太郎氏、働き方の未来を語る。「HRSS2021」基調講演レポート。
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河野太郎氏、働き方の未来を語る。「HRSS2021」基調講演レポート。

2021年5月26日、株式会社ビズリーチが主催する、経営者や人事関係者を対象としたオンラインイベント「HR SUCCESS SUMMIT 2021」が開催されました。

今年は、「DX時代の採用力」をテーマとして掲げ、各社の採用・人事領域における成功事例をはじめ、経営者・人事関係者の課題解決のヒントとなるようなコンテンツを、半日にわたってお届けしました。

イベント情報は、こちら


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今年は、同イベントの基調講演の一つとして、河野太郎氏(行政改革担当大臣)と南壮一郎(Visionalグループ代表)の対談が実現しました。(※事前収録した動画の配信を行いました。)今回は、「アフターコロナの日本企業の在り方と働き方の未来」というテーマのもと行われた対談の模様をお届けします。


プロフィール

河野 太郎/Kono Taro
1963年生まれ。米国ジョージタウン大学卒業後、富士ゼロックス株式会社に入社。1996年に第41回衆議院議員総選挙にて神奈川県15区初当選以降、8期連続当選。法務副大臣、行政改革担当大臣、国家公務員制度担当大臣、内閣府特命担当大臣、外務大臣、防衛大臣を歴任後、2020年9月、行政改革担当大臣に就任。
南 壮一郎/Minami Soichiro
1999年、米・タフツ大学卒業後、モルガン・スタンレーに入社。2004年、楽天イーグルスの創立メンバーとして新プロ野球球団設立に携わった後、2009年、ビズリーチを創業。その後、採用プラットフォームや人財活用プラットフォームをはじめとした人事マネジメント(HR Tech)領域を中心に、事業承継M&A、物流、Sales Tech、サイバーセキュリティ領域等においても、産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する事業を次々と立ち上げる。2020年2月にVisionalとしてグループ経営体制に移行後、現職に就任。2014年、世界経済フォーラム(ダボス会議)の「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出。


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新しい人の流れが、新しいルールを生み出す。

南:本日は、よろしくお願いします。さっそくですが、今回のサミットのテーマが「DX時代の採用」ということで、僕が一番最初に聞いてみたいのは、河野さんにとって「DX」とはどのような意味合いのものなのでしょうか?

河野:これからの日本を考えると、ぬくもり、つまり、人と人が寄り添うことを大事にしないといけないと考えています。例えば、少子化や高齢化が進んでいくなかで、子どもに寄り添う、高齢者に寄り添うことが、社会全体としてよりいっそう大事になります。

しかし、人口が急速に減っていくなかで、今までと同じ働き方をしていたら、そうした余裕がなくなってしまうと思うんですよね。大事なのは、人間は人間にしかできないことをやる、ということ。それ以外の業務はデジタルの力でどんどんなくしていくことで、人間は、やるべきことに集中できるはずです。それが、僕の考える「DX」です。

南:河野さんは、新卒で富士ゼロックスに入社されていて、日本で初めてとされるサテライトオフィスを作ったとお聞きしました。昨今、コロナによって働き方がどんどん変わっていくなかで、現状の日本の働き方についてどのように考えていらっしゃいますか?

河野:僕は大学を出て富士ゼロックスに86年に入社したのですが、その時に既に全世界のオフィスがネットワークでつながっていて、電子メールが飛び交っており、各国のエンジニアがデータを共有し合うことで遠隔で業務を進める光景を見てきました。その時は、「世の中ってこうなってるんだ」と、とても驚きましたね。

だからこそ、80年代後半に、私が日本で初めてのサテライトオフィスの現場責任者を任された時も、テクノロジーの力によって、いろいろなことを実現できるはずと考えていました。当時は、平塚から赤坂まで1時間半かけて通勤していましたが、通勤しなくてもできることはたくさんあるんじゃないか?と。

現在の日本では、コロナの影響を受けて多くの企業がテレワークに移行しましたが、やっぱり、やろうと思えばできるんですよね。ただ日本では、コロナが終わったら元のようにオフィスワークに戻そうという力学が働いています。諸外国では、「テレワークによって企業の生産性が向上した」と言う人が多いなかで、日本だけ逆の流れがあることを心配しています。

南:今、生産性という言葉が出ましたが、生産性の本質とは何だとお考えですか?

河野:実は日本には、例えば、昭和の時代において最適の形のオフィスが未だに数多く残っていて、それこそ高度経済成長期やバブルの時代に、「日本モデルがいいぞ」と言われていたそのままの感覚が消えていません。

一方、欧米では既に、最先端の技術を取り入れながら、全く異なるルールで新しいゲームをしている。これから日本は、いかに新しいルールを作って、新しいゲームをできるか。それが、生産性の本質につながってくるのだと思っています。

南:昨今、働き方改革という言葉が広まっていて、個人の働き方の話がある一方で、従業員の働き方をどのようにマネジメントするか、という話も重要なものとしてあると思います。

霞が関・永田町の話でいうと、河野さんの「サービス残業がないとはいえない」という発言があったかと思いますが、今後、従業員をマネジメントし、活躍を推進していくうえで、どのようなことを大切にすればよいと思っていらっしゃいますか。

河野:サービス残業はおかしいので、残業が発生したら必ず残業代を満額支払う。同時にマネジメントに求められるのは、誰が何時間、どのような理由で残業しているのかを把握して、業務を平準化すること、もしくは、それぞれの業務が生み出す価値をもとに「この業務はやめよう」というように業務を整理することです。

そのためには、そうしたデータが一目で分かるツールを持っていないといけませんし、何よりも、管理職がマネジメントする能力を持たないといけません。

南:日本の経営や人事の世界においても、データを管理する仕組みを活用することによって生産性の向上を目指す、という流れが進んでいます。一方で、最近の霞が関・永田町を見ていると、従業員の活躍を推進するだけではなく、どんどん外部から新しい人材を取り入れる動きがあります。この流れは、どのように始まったのでしょうか?

河野:これまで霞が関には、「国のため」「国民のため」という想いを持つ人がどんどん集まってきてくれていました。しかし、事務作業ばかりで、何年働いていてもやりがいや成長実感を感じられなければ、そうした想いを持った人も辞めていってしまいます。

大切なのは働きがいであり、一人一人が働きがいを感じながら働ける職場を実現するためには、霞が関が組織として変わらないといけないという危機感がありました。しかし組織は、今まで同じところにいた人間だけではなかなか変わることができません。だからこそ、外から異分子を入れる、変化を起こすための人間を外部から迎える、そうした考えから、キャリア採用を本格化させていきました。

また一方で、霞が関を辞めて民間の企業へ転職した人が、回転ドアをくぐるように戻って来れるようにすることも大事です。民間の企業の経験があれば、霞が関の働き方を見て「こんなルールいらないよね」と気付くことができるはずです。

もちろん、国の仕事をやりきって勲章をつけたうえで、民間で新しい挑戦をする人もいますが、どちらか一方通行だけではなく、官民それぞれの人材が行き来できる世界が、これからの時代に合っていると思っています。


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データ活用こそが、未来の「経営」の鍵となる。

南:河野さんは、日本人、日本企業の強みについて、どのようにお考えですか?

河野:日本人は、何より「擦り合わせ」が上手いと思っています。欧米では、一つ一つの業務がぱしぱしと切れていて、「自分の責任範囲はここまで」という認識が強い一方で、日本人は、一人一人がアサインされた業務を担当するだけでなく、相手のことを思いやる特性があり、それが日本人の強みなのだと思います。

特に製造業に顕著ですが、一つ一つの業務が切れているようでつながっている、「壁際の粘着性」のようなものが日本の特色の一つかなと思います。

南:日本は製造業において後発だったにもかかわらず、改善を繰り返しながら、世界に誇る生産性の高い産業へ成長しました。では、なぜ製造業ではそれができたのに、日本の多くの会社は同じようなことを実現できていないのか。

製造業の考え方は、他業界の会社にも通用するもので、要は、要件定義を明確にして、要素分解しながらボトルネックをどんどん解消し、アウトプットを最大化していく、ということです。他業界の会社も同じような発想で生産性向上ができるはずです。

だからこそ僕は、日本の企業にもまだ可能性を感じています。僕からすれば、生産性が低いのにもかかわらず戦えている今の日本の企業に伸びしろしか感じません。河野さんは、今後の日本の企業の伸びしろはどのようなところにあると考えていらっしゃいますか?

河野:例えば、製造業の場合、1分間に何台生産できるか、というようにアウトプットを明確に数字で表すことができます。誤差などがあっても、データをもとに改善していくことができるので、合理的にものごとを進めやすいと思うんですよね。

ところが、ホワイトカラーの場合、一つ一つの業務上の判断が、必ずしも合理的に決まるわけではないでしょうし、あらゆる結果や過程を数値で表すのは難しい。

ただ今後、データの活用が進み、日本の企業においてそれぞれの業務に関する数値化が進んでいくことで、労働生産性が大きく高まっていくのではないかと思っています。

霞が関の仕事についても同じです。「法律を何本通した」「予算をいくら付けた」といっても、それは霞が関の中の話でしかないんですよね。国民の生活とは関係ない指標に左右されるのではなく、何で一つ一つの業務の成果を測っていくか。そしてそれが、国民の生活に、どれだけ利便性をもたらしているか。それらが見えてくると、霞が関の生産性も更に高まっていくのではないかと思っています。

南:まさに「経営」ですよね。

河野:はい、おっしゃるように、霞が関も「経営」をしていかなければならないのだと思います。

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南:今日、このイベントに参加されている方の中には経営者の方も多いのですが、先ほどのお話にも少し重なりまして、これからは、会社が人を選ぶのではなく、人が会社を選ぶ時代になります。

そうした時代においては、自分たちの会社が「選ばれる会社」にならないといけない。今後の「選ばれる会社」の定義について、河野さんの考えを聞かせてください。

河野:大事なのは、やりがいです。今後、「貢献することができた」「成長することができた」といった感覚が、働く個人にとってより重要なものになると思っています。例えば霞が関の場合、労働の対価として報酬を受け取っても、「国のため」「国民のため」という実感が得られない状態が続いたら、別の選択肢を考える人が増えるでしょう。

それはもちろん企業においても同じで、これからの時代は、やりがい、もしくは、楽しさ、達成感を与えられる企業が最終的に選ばれると思っています。

南:この数年、Visionalグループとしてビズリーチ事業を手掛けているゆえに、いろいろな大企業の経営者様から、笑いながらではありますが、「南さんのせいで経営が難しくなったじゃないか」というお声をいただくことがあります。

なぜですかと質問すると、要は、多くの人が当たり前のように転職という選択肢を持つようになり、自社の社員が以前より多く辞めてしまっているから、ということなんですよね。社員が辞める、そして新しい社員が入ってくる、という今までなかった変数が加わることで経営が何倍にも難しくなっている、と。

現在の日本において、特に若い世代を中心に雇用の流動化が加速していますが、こうした時代において、それぞれの企業は何を大事にすべきでしょうか?

河野:大事なのは、「我々は~を実現するために存在している」という企業の目的意識です。その目的を一緒に達成しようとしている人が、その企業に集まっているのであって、本来企業は、変わらずに存在し続けることが目的なのではなく、それぞれに目的があり、その実現のために存在しています。

アメリカ企業の時価総額リストを見ていると、毎年のようにランキング上位の企業が変わり、また同じように、それぞれの会社の中で働く人も変わり続けています。

あらゆる物事が速いスピードで変化していく時代においては、日本も同じように、企業も人も変わり続けないといけない。企業が変わる、人が変わる、それによって、経済が前に進んでいくのだと思います。


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新しい時代において何が最適か、変化を恐れずに模索し続けていく。

南:そろそろ終了時間が迫ってきましたが、逆に、河野さんから私に何かご質問はありますか?

河野:これから南さんは、どのような世界の実現を目指しているのでしょうか。今の日本の経済や労働市場を、どのように変えていこうとしているのか。南さんが描くゴールについてお聞きしたいです。

南:僕は、日本の経営の領域において、ヒトや働き方のデータを集めて、そのデータを分析して活用することで、人間が人間らしく働ける、そうした世界観を日本でも実現したいと思っています。

データが主ということではなく、データはあくまでも人間が適切な判断をするためのもので、これからの時代は、こうしたデータ活用こそが経営の鍵となってくるはずです。この領域を今後のVisionalグループのビジネスの中核にしていきますが、お客様をどのように支援できるかいろいろと考えています。

僕自身、前職でプロ野球チームの経営に携わっていたので、よく野球を例にして説明するのですが、野球、特にメジャーリーグの世界では、選手の活用においてデータ活用が大きく進んでいるんですよね。

バットから球が当たったらどのくらいのスピードで跳ね返るのか。投手の投げたボールの回転数。打力、走力、守備力における、あらゆるデータが可視化され、それらを選手のパフォーマンスを最大化するために活用する。それだけではなく、中長期的な育成や採用(ドラフト)も徹底的に定量化され、選手の能力の最大化にデータ分析が用いられています。

今や球団経営には、エンジニアやデータアナリスト、またライフサイエンスのプロフェッショナルまでが携わっていて、こうした流れは、世界中の企業経営にとってとても示唆的だと思っています。

河野:「巨人の星」から「マネーボール」へ、ということですね。野球がそれだけ変わるのなら、やはり改めて、経営もデータの力によって変わっていかないといけないと思います。

南:最後に、本日視聴されている経営者・人事担当者のみなさんへ、河野さんからメッセージをお願いできないでしょうか。

河野:やはり、日本は変わっていかないといけないことは間違いないのだと思います。かつて、80年代に「JAPAN AS NO.1」と言われたこともありましたが、これだけ世の中のIT化が進んだ現在は、新しい時代において何が最適か、常に挑戦しながら模索し続けなければいけない。そのために、変化を恐れてはいけないのだと思います。

誰しも間違えることはあり、違うと思ったらすぐに変えればいい。そうした柔軟性が、民間企業にも政府にも求められています。日本経済を前に進めていくために、日本の社会を豊かにするために、変化を恐れずに新しいことにチャレンジしてもらいたいと思っています。


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