最高のサービス品質とユーザー体験を届けたい。QA基盤推進室の取り組み。
QA(Quality Assurance)とは、製造業などにおいて「品質管理」を指す言葉ですが、同じくIT業界でも、ソフトウェアなどの品質全体を保証すること、またその職種のことを意味します。ビズリーチでは、2018年5月、「お客様に最高のサービス品質とユーザー体験(価値)をとどける」ことをミッションとして、QAの専任チームであるQA基盤推進室が立ち上がりました。
今回はQA基盤推進室 室長の残田晋さんに、この組織の取り組みや仕事の面白さ、今後の展望などについて話を聞きました。
※本記事は、2019年12月27日に、前身ブログ「Reach One」で公開したものを、一部編集した上で転載したものです。
プロフィール
残田 晋/Nokota Susumu
国内大手旅行サイトなどを運営する企業で開発エンジニア、QAエンジニアとして16年間働いた後、2019年4月、QA基盤推進室立ち上げのフェーズで自分の力が活かせるという想いから株式会社ビズリーチへ入社。同年11月からは、QA基盤推進室 室長を務める。
事業拡大に伴い、QA専門チームを立ち上げ
──ビズリーチでQA基盤推進室が立ち上がった背景について教えてください。
ビズリーチでは、もともと各事業部の開発エンジニアがテストなどの品質の担保を行っていたため、QA専門のチームはありませんでした。
一般的に会社の規模が小さい時は開発チーム内でのコミュニケーションが密に取れるので、QAチームがなくても問題が起きにくいのですが、会社の規模が大きくなるにつれて専門のチームの必要性が高まってきます。ビズリーチでも、創業から10年が経ち、開発エンジニアがテストをしていても不具合が減らず、障害対応に追われることが多くなってきました。
そこで2018年5月、「お客様に最高のサービス品質とユーザー体験(価値)をとどける」ことをミッションとして、QA基盤推進室が立ち上がりました。事業の規模とともに社会的な責任も大きくなり、より一層プロダクトの品質が問われるなかで、QAが果たす責任は大きいと感じています。
──QA基盤推進室は現在どのような体制をとっているのですか?
2019年12月時点では、私を含めて正社員が7名、業務委託の方が数十名で構成されています。(※2020年10月時点では、正社員が11名、業務委託の方は数十名。)「ビズリーチ」「キャリトレ」「HRMOS」シリーズ(採用、評価、CORE)は各プロダクトの担当がついて、開発にも参加しています。
他のプロダクトについても、技術サポートという形でQAの勉強会を開いたり、QAエンジニアとしてのアドバイス、情報のインプットなどをしています。
ビジネス要件、設計段階から「品質担保」の観点を
──具体的には、QA基盤推進室はどのような仕事をしているのですか?
QA基盤推進室は、全社横断組織として、品質管理計画や開発プロセスを含めた全体のテスト計画の策定、実施などを担い、品質保証に関する業務を行なっています。
QAは、ただテストをするだけのエンジニアというイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実際は全然違います。ビズリーチでは、QAエンジニアがビジネス要件を決める上位レイヤーから参加することが多いですね。プロダクトの設計レベルでバグをなくすためにできることを提案し、プロセスに問題点があれば改善案を示したりしながら、事業部のエンジニアと一緒にプロダクトを作っています。
──QAエンジニアが上位レイヤーから入ることの利点について教えてください。
医師にそれぞれの分野に詳しい専門医がいるように、エンジニアにおいても、開発エンジニアとQAエンジニアでは専門性が大きく異なります。
専門性が違うと、同じポイントに対しても見る視点が違ってくるんですよ。例えば、あるプロダクトを開発する時、開発エンジニアは「言語やデータベース、API、アーキテクチャをどうするか」を考えます。最新のテクノロジーを取り入れたいという意識が強い人が比較的多く、その知識が豊富です。
一方で、私たちQAエンジニアは、「この画面だったらどういうテストが必要か」「このセキュリティ要件を満たすにはテストがどれくらい必要か」など、品質重視で考察していきます。そのため、最新テクノロジーについても、「それを使うことによる品質劣化が起きたり、リスクが高まらないか」「品質を担保できるのか」という視点で見るわけです。
専門性の高いメンバーが集まって違った角度から検討して開発するからこそ、品質を担保しつつ、最新のテクノロジーを使ったプロダクトが生み出せるのだと思います。
──なるほど。それぞれの専門性を活かしながら、より良いプロダクト開発を進めているというわけですね。
そうですね。一人一人の仲間がそれぞれの立場でプロとしての役割を果しているので、どのピースが抜けても良いプロダクトはできないと感じます。
また、スケジュールや予算を考える際にも、QAエンジニアの知識は必要で、QA基盤推進室の出した見積もりを参考にしながら、全体のスケジュールが決まっていくことも多いんですよ。
プロダクト開発の工数は2〜4割程度がテスト工程なので、テストに必要な期間や予算をしっかり把握したうえで全体のスケジュールを決めないと、大きなズレが生じてしまいます。QAエンジニアは画面の要素や、どのような機能が必要かといった情報をもとに必要な期間や工数を予測していきます。そのため、QAエンジニアはプロジェクトマネジメントのような役割も担っていると言えますね。
また先ほど、QAチームがプロダクト開発の上位レイヤーから参加することが必要だとお話ししましたが、さらにプロダクトの品質を向上させるためにはQAエンジニアだけでなく、全社的にQAへの高い意識と必要な知識をもってプロダクト開発に取り組むことが大切です。QAエンジニアが一緒にプロダクト開発に参加することで、他のメンバーへ品質保証の重要性の啓蒙につながっている部分もあると思います。
専門性の高さに惹かれてQAエンジニアに
──なぜ残田さんはQAエンジニアになろうと思ったのですか?
もともとはQAエンジニアになるつもりはありませんでした。QAエンジニアの手を借りなくても、自分たちで作ったプロダクトは大丈夫だという変な自信があったんですよ。
ところが、前の会社にいた時にバグが多くて思い通りにリリースできないことが何回も続いたんです。バグを直してもまた違うバグが出てくる。一向にバグは減らないし、リリース後も障害対応に追われ…。エンジニアのモチベーションは下がるし、事業にも迷惑がかかるしと、悪循環が続いていました。
そんな時、優秀なエンジニアでも見つけられなかったバグを、QA専門のエンジニアの方があっさり見つけてきたり、「こんなパターンの時にエラーが発生します」というアドバイスをもらえることが何度もありました。QAの専門的な知識を持ったエンジニアには、品質保証においては敵わないと思い知らされたんです。
QAエンジニアの専門性の高さに気付き、とても面白い領域だと興味を持つようになった頃、会社としてQA専門の部署を立ち上げることになり、そのマネジメントを任せてもらえることになりました。それがきっかけで本格的に自分もQAエンジニアとしての道を歩もうと心に決めました。
──開発エンジニアからQAエンジニアに移られたんですね。
日本ではまだ開発エンジニアがQAを兼ねるケースが多いですが、海外ではQAエンジニアの専門性が高く評価されていて、開発エンジニアより報酬が高いことも珍しくありません。そして日本でもQAエンジニアのニーズがどんどん高まってきています。
日本では、一昔前はエンジニアとして少し能力の低い人がQAエンジニアになるというイメージがありました。ですが、テスト工程は開発においてとても重要なフェーズですし、専門性の高い分野なので決してそんなことはないんです。会社のブランド価値を上げるのも下げるのもQA次第といっても過言ではないほど、品質保証は企業の信頼に大きく影響します。
私がQAを面白いと感じたのも、その責任の大きさなんですよ。リリース後のトラブルを防ぐためにQAは絶対に必要だし、お客様に提供するサービスの品質に責任を持つ立場は、とてつもなくやりがいのある領域だと感じたんです。
──実際にQAエンジニアとして現在感じている仕事のやりがいについて教えてください。
自分の専門性を活かして開発に携われることです。ビズリーチでは、開発エンジニアとQAエンジニアが平等な立場で議論し、お互いの専門性をリスペクトし合いながら、より良いプロダクトを目指しています。
「QAエンジニアのおかげで早くバグに気付くことができた」などのポジティブなフィードバックが多いこともやりがいにつながっています。働いていて、みんながONE TEAMでプロダクトを開発しているんだという充実感を感じます。
また、ビズリーチには、新しいプロダクトを生み出し続けている一方で、約10年以上にわたり築き上げてきたプロダクトもあります。フェーズの異なるそれぞれのプロダクトにQAとして関わることができるのも、この会社の魅力だと思います。
日本ではあまり例のない「QAエンジニアの新卒採用」を開始
──QA基盤推進室の今後のビジョンについて教えてください。
チームの人数もある程度増え、ビズリーチの主要サービスを網羅する体制が整ってきました。これからは、新たに立ち上がり続ける新規事業についても、より深く関わっていきたいですね。
そして今後は、2020年2月のグループ経営体制への移行に合わせて、QA基盤推進室のさらなる規模拡大を考えています。将来的には海外採用なども強化していきたいですが、まずはQAエンジニアの新卒採用に力を入れていきたいと考えています。
──QAエンジニアの新卒採用を始める理由について教えてください。
日本でQAの分野に関わりたいと考えるエンジニアの学生の方は、卒業後、開発エンジニアを目指したり、いわゆるテスト会社とよばれるテストを専門に行っている会社に行くことが多く、事業会社へQAエンジニアとして入社するケースはまだまだ少ないんです。
日本の大学では一部を除いてQAを専門的に学ぶ機会が少ないのが影響しているのかもしれませんが、事業会社が新卒でQAエンジニアを募集するケースが少ないことも、要因の一つだと思っています。海外ではQAエンジニアの新卒採用は一般的で、そのポジションを目指している優秀な学生の方も多い。だからこそ日本にも、潜在的には、QAエンジニアを目指す学生の数はもっと多いはずだと考えています。
私たちビズリーチのような事業会社が、新卒採用で積極的に門戸を開くことで、QAエンジニアを目指す方の母数の増加にもつながってほしいという想いがあります。
──新卒でQAエンジニアを目指す場合のキャリアパスはどのように考えていますか?
ビズリーチには、QA業界で有名なエバンジェリストが3名在籍しており、QAエンジニアのキャリアパスについてもしっかりと体系化して考えているので、新卒の方でも自分が目指すべき方向性を見つけやすいと思います。
──体系化というのは、具体的にどのようなものですか?
QAエンジニアとしての専門性は大きく、テストの自動化を担当する「SET」、マニュアルに沿ってテストを実行する「テスト」、アーキテクトを考える「QA」の3つに分かれます。
キャリアパスとしては、テストオペレーターからスタートして、いくつかの段階を経た後、最終的に各分野のスペシャリストを目指していきます。 ビズリーチに在籍しているエバンジェリストは、全ての分野のスペシャリティを持ち、会社全体を横断的に見ることができるトップレベルのQAエンジニアなので、一緒に働くことでスペシャリストの先のキャリアも思い描きやすいかもしれません。
──新卒採用への熱い想いを感じました。どのような学生の方に応募して欲しいと思っていますか?
学生時代にソフトウェア工学を学び、ベースとなる知識を持っている方で、何よりも本当に品質のことを考えている方、QAエンジニアの専門性に大きな可能性を感じている方に仲間になって欲しいと思っています。
日本では新卒からQAエンジニアとしてスタートした方がまだ少ないので、一緒にキャリアパスを築いていき、QAエンジニアの新卒採用のカルチャーを日本でも作っていければと思います。
──どうもありがとうございました!
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