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物流の仕組みを、未来へ加速させる。トラボックス、Visionalの一員として次のステージへ。

2020年2月、Visionalグループは、物流DXプラットフォーム「トラボックス」を運営するトラボックス株式会社を新しい仲間として迎え入れました。

今回は、「トラボックス」の事業内容や、Visionalへの参画の経緯、今後のミッションについて、改めてお伝えしていきます。

※本記事は、「流通ネットワーキング 2021年1・2月号」への寄稿記事を、一部編集した上で転載したものです。


プロフィール

吉岡 泰一郎/Yoshioka Taiichirou
1993年、学習院大学法学部卒業。株式会社住友銀行(現・株式会社三井住友銀行)に8年間勤務し、法人営業に従事。融資審査部門を中心に、自己査定・外国為替などの業務を経験。2001年1月、トラボックス株式会社に入社。2006年4月、代表取締役社長就任。宅地建物取引主任者、損害保険代理店資格。
南 壮一郎/Minami Souichirou
1999年、米・タフツ大学卒業後、モルガン・スタンレーに入社。2004年、楽天イーグルスの創立メンバーとして新プロ野球球団設立に携わった後、2009年、ビズリーチを創業。その後、採用プラットフォームや人財活用プラットフォームをはじめとした人事マネジメント(HR Tech)領域を中心に、事業承継M&A、物流、Sales Tech、サイバーセキュリティ領域等においても、産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する事業を次々と立ち上げる。2020年2月にVisionalとしてグループ経営体制に移行後、現職に就任。2014年、世界経済フォーラム(ダボス会議)の「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出。


はじめに

トラボックス代表取締役社長の吉岡です。トラボックスは今年から、即戦力人材の転職サイト「ビズリーチ」の運営会社を子会社に持つVisionalグループの一員となり、新たな船出を迎えました。

そこで本記事は、これまでのトラボックスの歩みについては私が、現状の業界の課題や今後の方向性についてはVisionalの南社長が寄稿する連名方式をとらせていただきます。なぜトラボックスがVisionalの一員になったかについても、以下の章をご覧いただければお分かりいただけるはずです。


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左から、吉岡泰一郎(トラボックス株式会社 代表取締役社長)、南 壮一郎(ビジョナル株式会社 代表取締役社長)、石田雄一(トラボックス株式会社)。


トラボックスの概要

(以下、トラボックス株式会社 代表取締役社長 吉岡 泰一郎による寄稿)

トラボックスは、荷主の「荷物を運んで欲しい」というニーズと、運送会社の「運ぶ荷物を見つけたい」というニーズをマッチングするプラットフォームとして、20年間運営し続けてきた。

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お陰様で、利用社数は創業以来順調に伸び続けている。排ガス規制、中型免許創設、燃料高騰など物流業界への影響が大きい変化や、リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍などの環境下においても、「トラボックス」求荷求車サービスを利用する運送会員数の増加傾向は変わらない。理由は様々あると思うが、私たちは創業以来一貫して「顧客目線」を何よりも大切にしてきており、そのことが現在の成長につながっていると自負している。

そして2020年からは、即戦力人材の転職サイト「ビズリーチ」の運営会社を子会社に持つ、Visionalの一員となる決断をした。Visionalは「ビズリーチ」が代表的なサービスであるため、人材系ビジネスのイメージが強いかもしれない。しかし実は、ITテクノロジーや先進的な仕組みの活用を通じた業界構造のデジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)を事業展開の中心に据えていて、人材業界以外にも、事業承継M&Aやサイバーセキュリティ領域にも新規参入している。

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Visionalグループについて

昨今の世の中のトレンドや配車サービスの進化を鑑みると、「顧客目線」に立ったさらなるシステムのアップデートや、お客様の業務のDXを後押ししていくためには、テクノロジーの強化は最重要経営課題である。サービスの進化のスピードを速めるためには、私たちが単独で行うよりも、オンラインのマッチングサービスにおける豊富な運用経験とITエンジニアを中心としたモノづくりの組織を持つ、Visionalの一員になることが最適であると判断した。

繰り返しになるが、トラボックスの最大の強みであり最も大切な経営方針は「顧客目線」だと考えているし、今後もそれは変わらない。Visionalの一員として、時代に合った形で、今後も自らを変化させていくつもりだが、これまで「顧客目線」を軸としながら、どのような考え方でシステムやサービスを変革させてきたのか、その歴史についてまずはご紹介したい。


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「トラボックス」のサービスサイト


中小トラック運送会社による徹底的な「顧客目線」でサービス開始

トラボックスは、1999年11月、東京都足立区の中小トラック運送会社2代目の2人が立ち上げた会社である。もともと自分たちがトラック運送会社を営んでいたことから、運送会社の気持ちが誰よりも分かることが強みであった。その強みが、結果として「顧客目線」という強みにつながっていった。

たとえば、当時も求荷求車サービスは既に複数存在していたが、その多くは入会基準などの敷居が高かった。トラック運送業界は中小・零細企業が99%を占めると言われている。そこで、いかにして小規模な運送会社でも利用しやすいサービスにできるかが2人の関心事であった。

先行するサービスよりも入会基準のハードルを下げるのはもちろんのこと、初期費用も運用費用も安く、専用端末を購入しなくても手元のパソコンや携帯電話でインターネットを利用すれば、即時情報のやり取りができることを、念頭に置いていた。いわば、運送会社間の相互扶助を支援するという発想であり、当初は全てサービス無料、設備コストゼロで利用できるようにしていた。

ただ、想像にかたくないと思うが、トラック運送業界はアナログなやりとりが多い世界であり、決してインターネットが得意とは言えない。そこで、使い手(中小トラック運送会社)の声を大切にし、現場に寄り添い、「誰にでも、取扱説明書要らずで、利用できるシステム」を目指した。例えば、運送取引に必要となる情報(入力項目)を最少限に絞るなど、徹底的に「顧客目線」のシステム開発を行っていた。


あえてアナログを残すことで顧客の利便性を向上させる

また、「デジタルとアナログの融合」を大前提に、インターネット上のやり取りだけでは完結しなくとも電話で話すことも良しとしていた。むしろ、商習慣的に電話を無くすことを良しとしなかった。なぜなら、電話で話すことで、万事うまくいく仕組みが業界のなかで確立していたからである。インターネットは確かに便利なツールではあるが、全てを一気に置き換えることは、必ずしも顧客の利便性を向上させるわけではない。

このように、「顧客目線」を軸としながら、「日常業務に合わせたシステムを提供すること」を徹底した。ネットバブルでわいた2000年頃、60を超える求荷求車サイトが乱立したが、これらの点が、最も差別化をはかれたポイントだったと思われる。

このようなサービスのコンセプトが顧客に受け入れられ、情報掲載数が増えていった。インターネット上には不足しているが、実務上で必要な詳細情報については「トラボックス」をきっかけに電話をして解決していただくという、まさに「デジタルとアナログの融合」体制をとっていた。

一貫した「顧客目線」のサービス運用姿勢により、口コミにより利用者が増え、商売に結びつく情報のやり取りが増え、会員企業各社の売上が増えるという好循環が生まれていった。

「同業者であるから、ライバルを増やさないために『トラボックス』を教えない」という考え方は一切なかった。むしろ「同業者の利用者を増やせば、荷物情報数・空きトラック情報数が増え、商売チャンスが増える」という意識により、新たな会員のほとんどは、「トラボックス」利用者の紹介によるものであった。

「これまでの自分のネットワークにいる仲間の運送会社には、『トラボックス』に加入してもらった。」という会員企業が多数存在したことが何よりも我々の誇りとなり、コストを要する広告も営業も、当時は一切行わなかった。

なお、創業以来20年間、今でも続けている取り組みに、全国各地での「会員交流会」がある。インターネット上で顔の見えない取引に対しての不安を取り除くためにスタートした。当初は、仲間うち程度の集まりでしかなかったが、昨年の東京交流会には、約500名が参加し、過去約70回開催してきた輪がどんどん広がっていることは素直に嬉しい。電話だけのやり取りだった取引先と顔を合わせる貴重な機会として好評を博している。


成長を加速させたサブスクリプション・モデル

サービスを初めて有料化したのは、運用開始から2年後の2001年であった。月額課金でサービス利用料をいただく、いわゆるサブスクリプション・モデルの導入である。

「トラボックス」は2001年から現在に至るまで、売上の大半はこのサブスクリプションによって成り立っている。一社当たりの売上は決して大きくはないかもしれないが、毎月安定的に売上が立ち、一年後の予測もしやすいため、「顧客目線」からブレることなく運用できることが強みだと感じている。

サービスを有償としたことについて、さまざまな副産物があった。まず、利用する会員の「本気度」が目に見えて向上した。加えて、当時はまだ、B2B領域においてサブスクリプション・モデルを運用するビジネスモデルの事例が少なかったことから、メディアに多数掲載いただくことができた。サービスの革新性や顧客目線の姿勢が評価され、「日本経済新聞インターネットアワード賞」を受賞したこともあり、新規会員登録数や情報数の増加につながっていった。


「取引相手の信用不安」という大きな課題に立ち向かう

サービス開始当時の最大の課題は、お互いの顔が見えないままに取引を開始することへの信用不安であった。競合するサイトには、運賃や貨物保険を保証するサービスが付保されていたが、「トラボックス」は情報をやり取りする場を提供することに徹していたため、会員企業間の取引には介在しない方針であった。運送契約はもちろん、金銭の授受も、基本的には会員同士の責任で行っていただいていた。

しかし支払い不履行はやはり一定の確率で発生するため、顧客目線に立つと、100%の与信保全は必須であると考えるようになった。そこで、2014年、保証会社と提携し、「運賃全額保証サービス」をスタートすることになった。「トラボックス」がサイト内で成約した荷物情報の運賃を全保証し、支払遅延が起きた場合には代位弁済するサービスである。本サービスは現在、この事業の新たな柱として利用社数を伸ばし続けている。


Visionalの一員として、次のステージへ

ここまで見てきたように、「トラボックス」は一貫して「顧客目線」でサービスを運営してきており、それ自体が他社のマッチングサービスに対する差別化要素になっていると考えている。

しかし昨今は、現状のサービスだけでは解決しきれない課題が業界内に数多く山積していることを肌身で実感している。それらを解決するには、テクノロジーを活用したDXは必然の流れであると思っている。ただ、我々がそれを単独で行うには正直なところ力不足であると感じていたため、数年前からパートナーを探し続けていた。そして、たどり着いたのがVisionalの南社長だった。

これまでの歴史については私からお話をさせていただいたが、現在業界が抱える課題や今後のサービスの方向性については、南社長の目線から解説いただくことにする。南社長自身は、トラボックスの共同経営が運送業界における初めての仕事となるが、私が感じる業界の課題感については、考えが完全に一致している。また、異業種の視点だからこそ、業界が抱える課題や今後の方向性について鋭い目線を持っていると強く感じている。


トラック運送業界が抱える課題

(以下、ビジョナル株式会社 代表取締役社長 南 壮一郎による寄稿)

物流業界は、紛れもなく国の様々な産業を支える、経済全体のインフラのような存在である。だからこそ、日本が今後も経済発展を実現していくうえでは、他の産業を牽引する形で、物流業界こそが、未来に向けて変革を遂げていかなくてはならない。

物流業界に参入を決断する際、運送会社の経営者様など、様々な方にヒアリングをしたが、厳しい意見しか耳にしなかった。また、国や研究機関のレポートに目を通しても、同じく、社会構造の変革と技術の変革に順応できず、苦戦する業界の姿しか描写されていなかった。我々の生活に不可欠な、国や経済を支える産業の姿として、率直に「もったいない」と感じた。

その後、吉岡さんやトラボックスの仲間たちとは、何度も議論を重ねてきた。これまでの煩雑な業務を、もっと快適に。複雑な構造を、もっとシンプルに。我々ができることは、データとデジタル技術を活用して、物流に関わる全ての人たちに、「喜ばれる価値」を提供し続けること。また、私たちはその新しい仕組みを通じて、これからの物流の未来を支え、社会の変革を加速させていく。みんなで、そんな約束を交わした。

どのような背景で、そのような約束が生まれたのか。例えば、トラック運送業界では、ドライバー不足が問題視されている。金銭的な条件や労働環境、イメージなど、仕事としての魅力が低いと思われていることが明らかな原因だ。少子化の波も重なり、ドライバーになりたいと考える若者は減り、業界全体の高齢化が進んでいる。

この人手不足の問題を要素分解すると、根本的な要因は、業務の生産性の低さにあり、IT技術の活用が、他業界に比べてかなり遅れていることが原因である。日常的に、ホワイトボードや紙で業務が管理され、ファックスでやり取りをする会社がまだまだ多い。このような古き良き商習慣や慣れたツールを使う方が短期的には「楽」で「便利」であることを重々理解しているが、実は業界全体の生産性の足を引っ張っている。

実際、経済産業省の「DXレポート」でも、物流領域はIT化が遅れており、「企業の生産性を落としている可能性がある分野」と記載されている。社会を支えるインフラのような産業の生産性が上がらないということは、結果的に国全体の生産性が向上せず、国力が弱まっていく。

各社の利益水準を上げるために、また働く人材を集めるために、物流業界全体の生産性を上げていかなければならない。新しく生まれた利益を、事業の生産性をさらに向上させるために、また、人が働きたいと思うような環境を整備するために投資しなくてはならない。このような他業界では当たり前のように行われていることから目を背ければ、物流業界全体の生産性を向上させていくことは難しいだろう。


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トラボックスの企業ミッション


トラボックスの今後のビジョン

「トラボックス」は、現時点では運送会社同士の会員制マッチングサービスであるが、今後はそのサービス範囲を拡大していきたい。引き続きトラボックスの最大の強みである「顧客目線」、そして「仕組みづくり」を大切にしたサービス運営を行いながら、同時に、IT技術やデータを活用して、お客様の業務変革を後押しするお手伝いもしたいと考えている。

具体的には、まずは前述したような、ホワイトボードや紙・ファックスなどにより、アナログで管理している業務を、デジタルなシステムに置き換えていくサポートをしたい。直接的に売上につながらない仕事を人ではなくシステムに任せれば、人は売上を上げる仕事に専念することができ、業務効率は大幅に改善する。また、配車や運航管理業務の簡素化と一元化を一層進め、業界全体の働き方の変化を支えたい。

このようにして、業界の生産性が向上していけば、待遇や働き方も改善できる。未来に向けて、物流業界が、若者の働きたい場所に加わることを目指したい。そして、業界の真のDXを支えることで、トラック運送業界のよりよい未来を皆と一緒につくっていきたい。



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