八ヶ岳の資源を活かしたまちづくりへの挑戦 ~Visional代表・南と専務理事が八ヶ岳の農業大学校再建にかける想いを語る~
Visional代表でビズリーチ創業者の南(壮一郎)さん(トップ写真:右)が、2024年4月に、個人の活動として、八ヶ岳中央農業実践大学校(公益財団法人農村更生協会が運営)の理事長に就任しました。
そして、10月にVisionalと八ヶ岳中央農業実践大学校は包括連携協定を締結し、2024年10月29日から4週間にわたって、「ビズリーチ」上で、八ヶ岳中央農業実践大学校の重要ポジション(4職種)の公募を実施中です。(募集締め切り:2024年11月25日)
公募ページは、こちら。
長野県にある約270ヘクタールの広大な敷地の中に、花や野菜の畑、酪農や乳製品の加工所、直売所をはじめとした多彩なコンテンツを有する同校。公募ページでは、財政破綻寸前に陥っていた同校の再建に向けて一歩を踏み出したチームを代表して、南さんと新たに八ヶ岳中央農業実践大学校の専務理事に就任した丸山侑佑さん(トップ写真:左)へのインタビュー記事を掲載しています。
今回、「All Visional」では、2人が同校の再建にチャレンジしようと思ったきっかけや、同校のポテンシャル、未来への想いをはじめ、公募ページではお伝えしきれなかった内容をお届けします。
プロフィール
広大な土地や美しい大自然に大きな可能性を感じ、再建への挑戦を決意。
──南さんは、2024年4月に、財政破綻寸前だった八ヶ岳中央農業実践大学校の理事長に就任しました。どのような経緯で理事長に就任したのですか?
南:もともと、自分がこれまでお世話になった社内外の仲間たちと家族が、大自然の中で様々な活動を行う拠点をゼロから作れないかと、広い土地を個人として探していました。そんな状況の中、2023年秋、ちょうど財政破綻寸前の状態にあった当校の関係者から連絡があり、再建を担ってもらえないかと頼まれました。農業も教育も、ビジネスとして取り組むには非常に難しい領域です。その厳しさを乗り越えるためには、抜本的な変革が必要です。自ら茨の道を歩く覚悟は当初なく、その時は再建の依頼はお断りしました。
しかし、昨年末に再度依頼がありました。関係者の熱心な想いに触れ心を動かされ、また、大学校の最大の資産である広大なキャンパスの可能性を考えたところ、徐々に気持ちが動き始めました。
全国各地で夏の猛暑が続く中、標高1,300mに位置している当校は、盛夏でも非常に涼しい環境。八ヶ岳連峰や北アルプス連峰に囲まれた、当校周辺の美しい大自然。東京から車で約2時間半の距離。地域住民も含めた、当校の根強いファンの存在。これらがあれば、地域の方々や様々な仲間の力を借りながら、学校の経営再建を実現できるのではないかと決心がつきました。
──続いて、丸山さんに質問です。簡単な自己紹介、また、参画することを決めた理由やきっかけについて教えてください。
丸山:私は、就職やエネルギー領域で成約支援事業等を手掛けるポート株式会社の副社長を務めています。ポートは、2018年にマザーズ市場(現:グロース市場)に上場し、その後も成長を続けており、現在私はコーポレートガバナンスや内部統制、人的資本マネジメントを管掌しています。
登山やアウトドアが好きで、たまたま訪れた八ヶ岳の魅力に惹かれ、2年前から原村での生活を始めました。南さんとはもともと知り合いではなかったのですが、今年4月に南さんが八農(やつのう)の理事長になったというニュースを見た時に、再建はどう考えても難しいだろうと思いました。でも、私には子どもが2人いて、ここの農場でよく遊ばせていたので、いつも遊ばせているところが潰れるかもしれないことを考えると、ただの傍観者ではいられず、南さんのSNSアカウント宛てに、直接メッセージを送りました。
南さんが私のことを初対面の方に紹介する時に「八農の一番近くに住む上場企業役員」とよく言うのですが、これまでの経営やM&Aの経験から培った経営戦略と経営判断の経験を、自分が好きな地域の発展に活かさないのはもったいないなと思いました。
参画のもう一つの理由は、南さんに、農業・自然を活かした上での再建をしてもらわないと困るなと思ったからです。子どもたちを育てる場所として自然豊かな原村を選んだのだから、キャンパス全体が自然とは関係のない商業施設や産業廃棄物の処理施設などに様変わりしてほしくなかったんです。
それで、すぐに原村の牛山(貴広)村長に連絡したところ、「今、LINEで南さんに繋ぎます。」と言われて、明朝にオンラインで話して、翌週末にはお互いの家族を交えて、自宅でBBQをしながら、いろいろな話をしました。その時、再建は難しいプロジェクトだけれど、この人と一緒に、この難度の高い挑戦をしてみたいなと思いました。
ただ、私も創業経営者でして、行動が伴う形ですが意見が強いほうですので、南さんがその点を受け入れてくれるなら、ぜひ再建の創業メンバーの一人として再建と真剣に向き合いたいと感じました。南さんからは、二つ返事で「二人三脚で歩みましょう。」と返事をいただき、私の参画が決まりました。
新たな仲間とともに「まちづくり×農業×学校」というチャレンジングなテーマに挑む。
──南さんは、八農のフィールドでどのような未来をつくりたいですか?
南:僕は学生時代の大半を自然豊かな場所で育ったため、地方経済の活性化への想いが強くあります。八農のこれからのテーマは、ビジネスの手法を徹底的に活用した「まちづくり×農業×学校」となります。教育、農業(花や野菜)、畜産業(酪農や養鶏)、観光、小売販売業などの様々な要素を活用して、学校を中心とした持続可能なまちづくり事業を推進したいです。地域の方々が誇れるような産業をつくり、地方における新しい産業づくりのモデルケースをつくっていきたいです。
そうは言っても、実際にプロジェクトを進めていく上では難しいことだらけですね。農業においては、自主自立したビジネスモデルをゼロからつくることが極めて難しいです。自然、天候など、ありとあらゆる不確定要素があり、また、農業の手法の多くが前近代的で、決して生産性が高いとは言えない。ただ、そこに経済合理性やビジネスのロジックを持ち込んでいくことができたら、新しい可能性が生まれるのではと考えました。
難しいことだらけなのは、学校の運営も同様です。理事長を引き受ける前に全国の農業に関する教育機関についてリサーチをしたところ、収益化できている学校は極めて稀であることが分かりました。八農についても同じで、もともと八農は国策として設立された学校で、運営上、補助金を受けることが当初からビジネスモデルに組み込まれていたのです。ただ、2013年度に民営化で補助金が打ち切りになり、その後も赤字体質を解消できず、立ち行かなくなってしまったという経緯があります。
また、今回のプロジェクトを通して地方経済の活性化を進めていく上では、地域の方々や自治体をはじめ、多くのステークホルダーと連携しながら進めていかなければうまくいかず、決して一筋縄ではいきません。
農業、学校、地方。難しさのトリプルパンチです。でも、その難しさの中にこそ、挑戦するやりがいや面白みもあると思います。ビジネス的な難度が高い農業と教育という2分野で、かつ、地方で、自分たちなりのブレイクスルーを実現できたら、日本の将来にとって大きなインパクトをもたらす課題解決になるのではないでしょうか。このプロジェクトは、困難な課題先進プロジェクトの一つと言ってもいいかもしれません。
だからこそ、創業から上場の経験を経て、最前線で事業づくりや経営に励んできた僕と丸山さんが、個人のプロジェクトとして挑む意義があるのです。
この状況は、楽天イーグルスの創業時に似ています。今回、八農が「まちづくり×農業×学校」というテーマに取り組むのに対して、楽天イーグルスの時は「地域活性化×プロスポーツ」というテーマでした。どちらも自主自立のビジネスをゼロから立ち上げるのが非常に難しいテーマです。
楽天イーグルスは、当時、近鉄バファローズが年間約60億円の赤字を抱え、オリックスに吸収合併され、球団が消滅することが決まっていました。12球団でのプロ野球を存続できるようにするために、楽天イーグルスは、50年ぶりの新規参入として設立されました。そして、当時、パ・リーグ球団では不可能とされていた黒字化を達成しました。
不可能を可能にしたチームを牽引したのは、楽天グループ代表の三木谷浩史さん、インテリジェンス(現:パーソルキャリア)創業者の島田亨さん、そして、前・LINEヤフー社長の小澤隆生さんです。ゼロからの起業経験が豊富な3人のもとに、それまで事業会社での勤務経験がゼロだった僕は28歳の時に飛び込んで、3人から事業づくりの本質を学びました。今の自分があるのは、楽天イーグルスでの経験があったからこそです。3人の偉大な経営者に事業づくりの現場で育てていただき、今でも心から感謝しています。
それから約20年の時を経て、今度は、僕と丸山さんという、ゼロからの事業づくりの経験を積み重ねてきた経営者が率いるチームで、新しいビジネスモデルに挑戦します。今回、公募を通してお迎えする方は、このプロジェクトの創業メンバーとして参画していただきます。とても難しいテーマではありますが、非常に貴重な経験になると思います。
──八農の再建を進めていく上では、自治体や地元の方々と連携していくことも重要だと思いますが、いかがですか?
南:非常にありがたいことに、自治体や地元の方々が積極的に応援・バックアップしてくださっています。地域経済へのカンフル剤的な役割として、新生・八農の再建に期待してくださっている方々もいらっしゃいます。多くの方々から応援・期待していただき、大変ありがたく、励みになっています。
丸山:自治体との連携という観点で言うと、原村の牛山村長は、2023年に選出された長野県最年少の村長で、持続可能な村づくりを宣言されており、当校の理事も務めていただいています。牛山村長や村役場職員の方々とも連携しつつ、また、農畜産業、教育、原村の自然環境などあらゆるコンテンツを活かしながら、これから私たちは、「学校を中心とした持続可能なまちづくり」をこれまで見たことのない規模で実現させていきます。
南さんの言うように難しいテーマではありますが、日本の未来にとって大きな価値があるテーマです。自分自身も人生をかけていい価値があると思っています。今回の公募を通してジョインしてくださる新しい創業メンバーの方と一緒に、10年後、20年後の日本に大きな価値を生み出していきたいと思っています。
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