「価値あることを、正しくやろう」私が、Marriage For All Japan様の採用支援プロジェクトを通して学んだこと。
Visionalグループの株式会社ビズリーチは、『すべての人が「自分の可能性」を信じられる社会をつくる』というミッションを掲げています。働き方やキャリア教育の変革を目指しながら、同時に、すべての人にとって重要なテーマである「ダイバーシティ」を推進する取り組みを行っています。
例えば、2018年、2019年には、「東京レインボープライド」へ協賛をさせていただきました。この協賛をきっかけとして、社内でLGBTに関する勉強会を開催したり、その派生として社内コミュニティ「虹リーチ」が立ち上がりました。
そして2020年には、同性婚(婚姻の平等)の実現を目指して活動を行う「一般社団法人Marriage For All Japan - 結婚の自由をすべての人に」様(以下、Marriage For All Japan様)の人材採用を支援させていただきました。
4月に「ビズリーチ」上で、プロジェクトリーダー等の公募を行い、4週間の募集期間で計400を超える応募が集まり、最終的に2名の採用が実現しました。
※Marriage For All Japan様の公募記事は、こちら。
今回は、このプロジェクトを担当したビズリーチ事業部の森定郁実さんに、プロジェクトが実現するまでの背景、そして採用に至るまでの取り組みについて聞きました。
※本記事内の写真の撮影は、ソーシャルディスタンスを保ちながら行いました。
プロフィール
森定 郁実/Morisada Ikumi
兵庫県神戸市出身。大阪大学外国語学部卒業。2017年4月に新卒で株式会社ビズリーチに入社。ビズリーチ事業において新規開拓営業を経験した後、2019年8月より、主に大手顧客の採用を支援する総合企画部に所属。現在は、新規契約企業様や既契約企業様への採用コンサルタント業務を担当。
誰もが「自由」に人生の選択をできる社会のために。
──はじめに、このプロジェクトが始まるきっかけについて教えてください。
ビズリーチは、2018年、2019年に「東京レインボープライド」へ協賛をしており、その協賛をきっかけにMarriage For All Japan様と出会い、採用課題についてお伺いする機会がありました。そして、ビズリーチ事業部として「Marriage For All Japan様の採用のご支援をしよう」と、プロジェクトが始まりました。
そして、「責任あるプロジェクトを、新しい世代の仲間に任せてみたい」という事業部の意向のもと、当時の所属部門における2017年新卒入社組の私と野澤(征)さんに声がかかりました。
私は大学生の時に、タイへの留学をきっかけにLGBTをテーマにした卒論を書いた経験があったので、ぜひ担当させていただきたいと上司に話しました。
──LGBTをテーマに卒論を書いたのはなぜだったのでしょうか?
私は大学でタイ語を専攻しており、現地で語学力を向上させたいと思い、大学4年生の時に留学しました。そこで、LGBTの友人が何人もできて、その時は、セクシャル・マイノリティーについて違和感を感じたりすることなく生活を送っていたのですが、その話を日本に帰国した後に大学の友人に話すと、とても驚かれたことが印象的でした。
タイ留学中の一枚
それから、国ごとのセクシャル・マイノリティーに関するレポートなどを調べていくなかで、日本は他国と比べても、国民の理解や認識が大きく遅れていることが分かってきました。次第に、このテーマについて問題意識を抱くようになり、卒論として研究成果をまとめました。
このような経緯があり、LGBTやセクシャル・マイノリティーは、私にとっての大きなテーマだったので、今回、Marriage For All Japan様のお話を聞いた時はご縁を感じました。
そして、仕事を通して、たとえ間接的であっても、世の中のセクシャル・マイノリティーのために働きかけられることに嬉しさを感じ、同時に奮い立たされる思いをしました。
──このプロジェクトの経緯について教えてください。
はじめに、Marriage For All Japan代表理事を務める弁護士の寺原(真希子)様にお会いして、新しい仲間を採用されたいとお考えになっている理由についてヒアリングしました。その時、寺原様から「自由」についてのお話を聞き、とても感銘を受けました。
寺原様は、「社会的にマイノリティーである」という理由だけで、ある特定の方々が、人生において多くの人が自由に行っている選択をできないことに理不尽さを感じ、約10年前からLGBTに関わる活動を始めたと説明してくださりました。
この社会では、LGBTに限った問題ではなく、事故や病気などによって働き方の変更を迫られるなど、誰もが何らかの側面においてマイノリティーになり得る。その意味で、「誰もが平等に機会を得られる社会」を目指すことは、あらゆる人にとっての「自分事」である、と寺原様はおっしゃられました。そして、「セクシャル・マイノリティーに寛容な社会は、きっと、他のマイノリティーにとっても寛容な社会なのではないか」というお話を聞いて、涙が出るほど共感しました。
誰もが「自由」に人生の選択をできる社会を目指す。その第一歩として、Marriage For All Japan様は「婚姻の平等」の実現のために活動されています。そうした志は、ビズリーチのミッション『すべての人が「自分の可能性」を信じられる社会をつくる』にも通じていると感じました。だからこそ私は、Marriage For All Japan様や寺原様、柳沢様のために、力になりたいと強く思いました。
──ヒアリングを通して、どのようなことが分かってきましたか?
Marriage For All Japan様は、2023年の同性婚の法改正に向けてスピード感をもって活動を進めていきたいとお考えでしたが、スタッフのほとんどの方が、本業の合間に時間をやりくりして活動に取り組まれている状況でした。
また、スタッフの多くが弁護士であるため、そうした方々が、スピード感をもって活動を進めていくうえで必要となる経営や事業運営、プロジェクトマネジメントなどのノウハウやスキルに長けているわけではありませんでした。
だからこそ、「それぞれの領域を担うプロフェッショナル人材を迎え入れ、2023年の法改正をより現実的なものにしたい」と寺原様は考えられていました。しかし、有償のスタッフ採用は今回が初めてで、かつ、設立されたばかりの社団法人なので、採用にかけられる費用が少ないという課題がありました。
このように、通常の案件とは異なる点が多かったので、どのように進めるべきか不安な気持ちもありました。
──そうした状況のなかで、どのようにプロジェクトを前に進めていったのでしょうか?
「ビズリーチ」は一定の利用料がかかるサービスではありますが、Marriage For All Japan様の目指す姿に強く共感したため、無償で採用支援をできないかと考えました。
そこで調べたところ、過去に無償で採用支援を行った事例はほとんどなかったため、野澤さんと一緒にさまざまな可能性を考え、社内の各部門の担当者にも何度も相談に行きました。
最終的には、ビズリーチのミッションである「すべての人が『自分の可能性』を信じられる社会の実現を目指す」ために同性婚のアドボカシー活動に貢献することは、ビズリーチとしての社会への貢献活動であると、社内の同意を得て、無償の採用支援を行うことが決まりました。
「ビズリーチの担当者」という肩書きを超えて、真のビジネスパートナーを目指す。
──今回、具体的にどのような形で採用の支援をしたのでしょうか?
Marriage For All Japan様は、2019年1月に設立されたばかりで、まだまだ一般的な知名度は高くありませんでした。だからこそ、まずは、Marriage For All Japanという団体について、多くの方に知っていただくことがスタートラインだと考え、公募というサービスを提案しました。
また、公募記事を通して単に活動内容を伝えるだけではなく、LGBTや同性婚について、一人でも多くの人に興味を持ってもらい、共感していただく必要があると考えました。
私自身は、取材に向けて理解を深めるために、実際の裁判を傍聴させていただいたりもしましたが、普段からこうしたテーマについて意識していない方も多いと思います。そうした方々に興味をお持ちいただくために、記事には強いインパクトが必要だと考え、そのために著名な方に登場いただく方向で検討を進めることにしました。
先方とのお打ち合せの場で、柳沢様が、お知り合いだった元プロ陸上選手の為末(大)様の名前を挙げてくださり、その場でご本人へ連絡してくださりました。そして大変ありがたいことに為末様がすぐに快諾してくださりました。
取材では、寺原様は弁護士の観点から、柳沢様はビジネスパーソンとしての観点から、そして為末様はスポーツ界の観点から、多角的にLGBTや同性婚についてお話しいただきました。読者の方に、このテーマについて「当事者」としての意識を持っていただきたいと考えていたので、こうした取材が実現したことがとても嬉しかったです。
──公募記事の制作、公開から採用に至るまで、他にどのような取り組みを行ったのでしょうか?
Marriage For All Japan様は、正社員の採用を行うのが初めてでしたので、寺原様たちと一緒に、求人の制作や選考フローの整備を進めていきました。実際に選考が始まってからは、選考を担当される方とコミュニケーションをとりながら、面接における選考ポイントを整理したり、候補者様の体験向上に向けて、選考フローのブラッシュアップなどを進めていきました。
最終的に、400名を超える方々からの応募が集まり、2名の方の入社が決まりました。多くのビズリーチ会員様が公募記事を読み共感してくださったことが何よりも嬉しかったです。
また、実際に入社された方とお話しする機会をいただき、「こうした挑戦の機会を与えてくれてありがとうございます」と感謝の言葉をいただきました。その時、今回の採用支援は、非常に意義があるものだったと確信したと同時に、新しい仲間を迎え入れたMarriage For All Japan様の今後の活動が、とても楽しみになりました。
──今回の件を振り返ってみて、特に印象に残っていることはありますか?
Visionalには、「価値あることを、正しくやろう」というバリューがありますが、その意味について改めて深く考えるきっかけになりました。
今回のMarriage For All Japan様への採用支援は、お客様にとって、世の中にとって、そして、私たちビズリーチにとっての「価値」につながる事例だったと思っています。自分が携わる人や会社、ひいては世の中全体のために、胸を張って仕事に打ち込めたことは、私にとって大きな自信、誇りとなりました。
もちろん、前例のないことを実現するうえでは、大変なことも数多くありました。しかし、このプロジェクトに懸ける想いを真っ直ぐに伝えることで、部署を問わず、多くの仲間が快く協力してくださりました。当時、新卒3年目だった私たちに、こうした挑戦の機会を与えてくれた上司には、とても感謝しています。
──今後、森定さんは、どのようなことに挑戦したいと考えていますか?
私は、ビジネス開発職として法人のお客様と仕事をするなかで、目の前のお客様に、「家族」や「親友」のような大切な存在として向き合うことを意識しています。
また、新卒で入社した時から今に至るまでずっと、悔しさや嬉しさを含め、その人たちのために本気で泣けるような仕事をしたいと思い続けています。実際に、入社してから3年半で、数え切れないほど涙を流してきました。
ただ、そうした想いが強すぎると、ビジネスの観点が抜けてしまいがちです。今回の経験を一つのきっかけにして、今後はこうした観点を大事にしながら、より事業やサービスの成長にコミットしていきたいです。そうすることが結果として世の中のためになると信じているためです。
そして最終的には、「ビズリーチの担当者」という肩書きを越えて、お客様から「森定さんにお願いしたい」と期待していただけるような関係性を実現していきたいです。一社一社、一人一人のお客様から、信頼されるビジネスパートナーとして認めていただけるような人になるために、これからも引き続き挑戦し続けていきたいです。
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今回の「All Visional」の記事化にあたって、寺原真希子様(Marriage For All Japan代表理事 弁護士)からコメントをいただきました。
森定様と初めてお会いし、Marriage For All Japanの想いをお話しさせていただいた際、森定様が深く共感してくださり、「社会を変えるプロジェクトにご一緒できて光栄です。全力でサポートさせていただきます!」と目を潤ませながら仰ってくださったこと、ビズリーチの皆様になら安心してお任せすることができると心強く感じたことが、今でも鮮明に思い出されます。
Marriage For All Japanがスタッフ採用をこのような方法で行ったのは、今回が初めてでしたが、森定様をはじめとするビズリーチの皆様は、本当に真摯に私たちのお話を聞いてくださり、最後まで丁寧にサポートしてくださいました。また、プロジェクト自体の遂行に加えて、例えばMarriage For All Japanが全面的に支援している「結婚の自由をすべての人に」訴訟を裁判所まで自発的に傍聴に参加してくださるなど、Marriage For All Japanのミッションを真に理解するための労力も惜しまずに費やしてくださいました。おかげさまで、本当に多くの皆様から応募をいただき、強力な人材を迎え入れることができました。
ビズリーチ様を介してMarriage For All Japanの一員となったスタッフは、既に私たちにとって欠かせない存在となっています。この新たなスタッフとともに、一日も早く、婚姻の平等(同性婚の法制化)を実現すべく、前に進み続けていきたいと思います。
「All Visional」では、これからもVisionalの仲間たちの活躍を紹介していきます。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Marriage For All Japan様、NPO法人 LGBTとアライのための法律家ネットワーク様、認定NPO法人 虹色ダイバーシティ様の3団体によるプロジェクト「Business for Marriage Equality」のキャンペーンサイトにて、今回の取り組みに関する記事が掲載されています。ぜひ、合わせてご覧ください。
この記事の執筆担当者
松本 侃士/Matsumoto Tsuyoshi
1991年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。2014年、音楽メディア企業に新卒入社し、音楽雑誌・ウェブサイトの編集や、採用などを経験。2018年、株式会社ビズリーチへ編集者として入社。現在は、人財採用本部・採用マーケティンググループで、「ALL VISIONAL」の運営などを担当している。
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