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独自のデータ×最新のテクノロジー。進化し続ける「ビズリーチ」を象徴する「GPTモデルのレジュメ自動作成機能」の開発秘話をお届けします。

即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」は、ご利用いただく企業様や会員様にとってより価値のあるサービスへと進化するため、最新のテクノロジーを活かした新機能を続々とリリースしています。2023年には、会員様向けに「GPTモデルのレジュメ自動作成機能」を、続けて、企業様向けに「GPTモデルの求人自動作成機能」をリリースしました。

会員様向けの「GPTモデルのレジュメ自動作成機能」は、キャリアを主体的に考えるビジネスパーソンが、小さな負荷で、簡単に、最適な内容のレジュメ(職務経歴書)を完成できる機能です。

転職活動における最初のハードルとなるのがレジュメの作成です。レジュメ作成においては、これまでのキャリアを振り返り、スキルや経験を言語化する必要があるため手間や工数が非常にかかりますが、この機能によって、自動で、かつ、スピーディにレジュメを充実させられるようになります。

企業様向けの「GPTモデルの求人自動作成機能」は、最短30秒で高精度な求人が自動で提案される機能です。即戦力人材の採用ニーズが多様化し、採用難度も高まる中、求める人材の役割を定義し、必要なスキルや経験、特性を明確にした上で求人を作成することは、採用担当者にとって非常に負担の大きいものになっています。この機能によって、職種についての深い理解がなくても、採用したい人材像を1文程度入力する、もしくは、ポジション名を入力し、募集背景を選択するだけで、求人が自動で提案されるようになります。前例のない職種を募集する際や、これまで採用経験のない方が求人を作成する際にも有効です。

これらの新機能にとどまらず、今後も「ビズリーチ」は、独自のデータと最新のテクノロジーを活用しながら、ビジネスパーソンと企業のニーズを把握し、質の高いマッチング機会の最大化を実現していきます。今回は、進化し続ける「ビズリーチ」を象徴する事例の一つとなった「GPTモデルのレジュメ自動作成機能」のプロジェクトメンバーにインタビューを行いました。起案から機能リリースに至るまでの開発ストーリーを振り返ってもらった上で、今後の構想について聞きました。


プロフィール

新井 政樹 /Arai Masaki
慶應義塾大学文学部卒業後、2018年に株式会社ビズリーチに新卒入社。「ビズリーチ」の会員様向けのマーケティング、企業様向けのカスタマーサクセスに従事した後、2021年より「ビズリーチ」のプロダクトマネージャーを務める。会員様向けモバイルアプリの新機能の企画、開発をリード。

松澤 祐貴/Matsuzawa Yuki
新卒で大手通信教育会社に入社、基幹システムや新規プラットフォーム開発のプロジェクトマネジメントに携わる。その後、楽天グループ株式会社にてグローバルデータプラットフォームの構築やデータマネジメント、それらを利用した「楽天市場」の検索改善などに従事。2021年、株式会社ビズリーチに入社し、「ビズリーチ」の会員様・企業様向けプロダクト双方のプロダクトオーナーを務める。

枝廣 憲/Edahiro Ken
株式会社ビズリーチ 執行役員 CSMO
一橋大学経済学部卒業後、2004年に株式会社電通に入社。2012年、株式会社gloopsに入社し、マーケティング本部長、CMOなどを歴任。2014年にKing Japan株式会社代表取締役に就任し、パズルゲーム「キャンディークラッシュ」などのプロダクト開発・マーケティングを統括。2019年、株式会社ビズリーチ入社。2020年2月、CSOに就任。2024年2月より現職。

萩野 貴拓/Hagino Takahiro
高校時代に開発したソフトウェアで起業し、大学在学中からベンチャー企業でチーフエンジニアを務める。株式会社ビズリーチでは、求人検索サービス、研究開発部門(現:AIグループ)の立ち上げに従事。現在は、先端技術を活用した製品の企画・開発をリード。執筆やオープンソース活動のかたわら、技術顧問や社外CTOとして大企業からグロース企業まで幅広い支援実績を持ち、起業家として経営DX領域での事業開発も行う。


左から、萩野貴拓さん、新井政樹さん、
枝廣憲さん、松澤祐貴さん。


転職活動における最初の大きな難関「レジュメ作成」を突破するために。

──はじめに、皆さんそれぞれの今回のプロジェクトにおける役割について教えてください。

松澤:まず、新井さんはプロジェクトリーダーとして開発全体をリードしてくれました。そして、枝廣さんと萩野さんは、スピード感をもってプロジェクトを推進するために、それぞれ事業開発と技術開発のスペシャリストとして入ってくれました。自分は、企業様と会員様の双方の利用状況などを把握している立場から、新井さんがリードするプロジェクトを後方支援しました。

──今回のレジュメ自動作成機能のプロジェクトが始動したきっかけについて教えてください。

萩野:たしか2021年頃、枝廣さんと「ユーザー様の転職活動における一歩目の大きな課題は、レジュメの作成にある」という議論をしたことが最初のきっかけだったと記憶しています。

松澤:転職活動における最初の難関は、自分自身について内省し、それを文章化することです。自分はどういう人間なのか、何ができるのか、何がしたいのか、それらをレジュメを通して伝えることは決して簡単なことではなく、転職活動のスタート地点でつまずく人も多いです。しかも、レジュメを書き上げることに時間や労力を費やす結果、「自分自身が何をしていきたいのか」について考える時間や余裕がなくなることもあります。我々としては、この「レジュメの作成が大変で、自分自身と向き合うことに時間をかけられない」という会員様の課題を解決する機能の提供が必須だと考えました。

一方で、躊躇なくレジュメを書き上げられる人たちには不要な機能なのではないか、という考え方もありましたが、そうした方たちにとっても、より質の高いレジュメを効率的に作成するためのサポート機能であれば価値があると考えました。

新井:解決すべき課題がクリアになった後、社内で新機能の開発の動きが始まりました。いくつかプロトタイプを作成していたのですが、2022年11月にOpenAI社が開発したAIによるチャット生成サービス・ChatGPTがリリースされ、それが今回のレジュメ自動作成機能に繋がっていきます。ChatGPTのインパクトは非常に大きなもので、従来とは比べものにならないほど高性能な生成AIが一気に身近になりました。

萩野:過去のバージョンのものはどれも我々の期待を超えず、当時はサービスへの活用には時間がかかりそうだと言われていましたが、ChatGPT(GPT-3.5)はあまりにも優秀で驚きました。OpenAIのAPIが公開されるやいなや時間を忘れて夢中で新しいプロトタイプを作り、社内の関係者に見てもらったところ、この最新技術を取り入れて、新機能の開発を急ごうとプロジェクトがさらにスピードをあげて動き出しました。

新井:新機能の開発を進める中で、どこまで内製をしてどこから外部のテクノロジーを活用するかについては慎重に議論を重ねますが、この時ばかりはみんなの意見が一致しました。それが2022年の年末です。

萩野:2022年の12月中には、新井さんと企画し開発に向けて動いていました。

新井:プロジェクトの起案をするにあたって、社内の様々な部署の方からの協力を得るために動きましたが、もともと各部署の皆さんと「会員様が、負荷なく簡単に、高品質なレジュメを作成できるようにする」という大きな目的についての目線が合っていたため、スムーズにプロジェクトを進めることができました。

萩野:また、実際にプロジェクトが動き始めた後、全社ミーティングで今回の新機能の構想をビズリーチ社の皆さんにプレゼンする機会があり、その場で社員の仲間たちからもらった多くのフィードバックが開発を進める上での良い気付きになりました。

新井:例えば、「もし、この新機能によってレジュメの内容が均質化してしまったら、採用企業様にとってのサービスの価値が薄まるのではないか?」という声がありました。企業様と会員様の双方と向き合う事業だからこそ出てくる観点です。

松澤:ただ、議論や検討を重ねていく中で、最終的には、「一人ひとりの会員様が持つこれまでのスキルやキャリアはそれぞれ異なり、それらの積み重ねによってその方の個性がレジュメとして表現されるので、この新機能によってレジュメが均質化されるとは限らない。」という結論に至りました。

萩野:チームの中で何度も「人の個性はどこに出るのか」という議論をしました。僕は、人間の個性は、キーワード、トピック、プロット、ストーリーという順番で、だんだんと唯一無二なものになっていくと思っていて、それを表現するレジュメも同様だと思います。まずはキーワードでスキルを抽出し、そこに肉付けする形でトピックを作成する。そのトピックの並びによってプロットが生まれ、そして、そのプロットの積み重なりによって、その人だけのキャリアのストーリーになる。このように考えると、レジュメ自動作成機能を活用しながら、一人ひとりの会員様の個性を表現することは可能だと考えました。

──新機能の在り方について議論を進めていく中で、そもそも「キャリアとは何か?」という本質的な問いに至ったわけですね。

松澤:そうですね。「結局、レジュメって何がどうなっていたらいいんだっけ?」と問いながら、本質的に何を実現すべきなのかをチームで突き詰めていきました。

新井:そういった議論を続けながら、レジュメ作成のプロセスにおいて何をどこまで自動化することが適切なのかを整理していきました。その境界が、今回の新機能を利用する会員様にとってのレジュメ作成の一連の体験において重要な要素となるからです。

──今回の新機能においては、OpenAI社のテクノロジーが大きな役割を果たしていますが、一方、ビズリーチ事業部がこれまで磨き上げてきた技術や蓄積してきたデータはどのように活かされているのでしょうか?

新井:会員様が、スムーズにAIに指示を出せるようにプロンプトをレコメンデーションするといった要所に、当社が独自で育てたAIと「ビズリーチ」のデータベースが活用されています。

萩野:一人ひとりの会員様に、これまで「ビズリーチ」が蓄積してきた膨大なデータをもとに次々とキーワードを提示しながら、その方のキャリアのストーリーの原案を引き出していきます。それを最終的に文章化するのはOpenAI社の技術なのですが、プロンプトを組み立てる仕組み、また、UXやUIのデザインはビズリーチ社独自のもので、特許も取得しています。(特許については、こちら。)


世の中に一番求められているものが何かを見極めながら、「ビズリーチ」を進化させ続けていく。

──開発のプロセスの中で、特に大切にしていたことを教えてください。

萩野:新機能の品質をしっかりと証明することにこだわり抜きました。今回、東京大学大学院経済学研究科教授兼東京大学マーケットデザインセンター(以下、UTMD)センター長の小島武仁氏とUTMDチーム様と連携して、時間をかけて丁寧に品質の検証を行いました。UTMD様との共同での性能評価の結果、GPTツールを使用してレジュメを作成すると、使用せずに作成するよりも質の高いレジュメを作成でき、さらにスカウト受信数も増えることが分かりました。(詳細は、こちら。)

枝廣:UTMD様との連携によって品質を徹底的に検証しようと考えたのは、この検証のプロセス自体が世の中の他のAI関連サービスとの差別化の一つになると考えたからです。当時既に、GPTモデルを使ったAI関連のサービスが数多く世に出ていて、そうした流れの中で、単に「GPTツールを作った」というだけでは何も言っていないのと同じだと思いました。このレジュメ自動作成機能は、私たちビズリーチ社が、今後どれだけ質の高いAIサービスを世の中に提供していくことができるかを問われるきっかけになると思い、単に急いでリリースするのではなく、客観的、かつ、学術的な観点で公平に機能の品質をジャッジしてもらうプロセスが必要だと考えました。

松澤:正直、社内からは一刻も早いリリースを期待する声もありました。ただ、我々は何のためにこの機能を提供するのか、という原点を見失いたくなかったので、丁寧に検証を進めていきました。もちろん、スピード感をもってリリースすることも大切で、品質とスピードのバランスは非常に難しかったです。ただやはり、価値あることを正しくやる上で、最短で進めつつも、かけるべきところにはしっかり時間をかけることも必要な選択だったと思います。そうしたこだわりが、会員様への価値や、さらには、この事業の中長期的な成長に繋がると思ったので、決して妥協してはいけないと思いました。

新井:品質へのこだわりに関しては、セキュリティや倫理の観点も重要なポイントで、法務をはじめとした各部署の方たちと密に連携しました。具体的には、OpenAI社と当社の間の情報の取り扱いに関する検討や、レジュメ自動作成機能によって生成される文章や言葉について、宗教、ジェンダー、人種をはじめとした様々な観点で倫理的に問題ないかなどを検討し、必要な対策を施しました。回答内容を詳細にコントロールできない生成AIを活用する上で、我々はどこまでその回答の責任を持つのかが検討のポイントとなりました。

他にも、プロジェクト全体を通して多大な貢献をいただいたAIグループの皆さん、企業様と向き合うセールス・カスタマーサクセスの皆さん、会員様と向き合うカスタマーサービスの皆さんなど、社内の様々な役割を担う方たちと密に連携し、リリースに向けて機能を磨き上げていきました。

──社内のステークホルダーが多いということは、それだけプロジェクトを前に進めていく上で大きなパワーが求められたと思います。

新井:このプロジェクトを進めていく上で重要だったのは、それぞれの組織や役割を越えて、みんなで最終的な完成型のイメージを高い解像度で共有できているかどうか、だったと捉えています。その上で、皆さんがそれぞれの観点から気になる点については、丁寧にコミュニケーションを重ねながら一つずつ解決していきました。

松澤:社内各所と連携を進める中で、このプロジェクトについて否定的な意見を言う人がいなかったことは、とてもビズリーチ社、Visionalらしい点だと思いました。皆さん、なんなら乗り気で積極的に意見をくださいましたし、最も懸念されていたセキュリティについても、前のめりに巻き込まれてくださった皆さんのおかげでスムーズに対策を進めることができました。

──今回の新機能について、会員様からはどのような反響がありましたか?

新井:会員様からの反響は、「どれぐらいの人が使っているか」「どのような文面が作成され、実際のレジュメにどのように反映されているか」などのデータとして表れてきています。当初想定していた以上に多くの会員様に利用いただいており、大きな手応えを感じています。

萩野:そうした数値として表れている結果や会員様からのお声が嬉しい一方で、まだまだ実現できていないことがあるというもどかしさもあります。今の段階では、全ての会員様のキャリアを高い解像度をもって表現することはできていません。例えば、僕のような仕事もその一つかもしれませんが、人に説明するのが難しい仕事をされている方も多いと思うのですが、そうした方たちのレジュメを正確に書けるレベルには現時点ではまだ達していません。今リリースしている機能が完成型では決してないですし、さらなる進化のための取り組みはずっと進行中です。

枝廣:もちろん、完璧なレジュメ作成自動化が実現するのがゴールではなく、僕らは、これからもAIをはじめとしたテクノロジーの可能性を追求し続けながら、会員様へのより質の高い体験の提供を目指していかなければいけません。例えば、コンシェルジュのようなAIアバターと対話しながら、まるでオンラインミーティングをしてるような感覚でレジュメをブラッシュアップし、完成し切るところまでもっていくような体験も将来的には考えられると思います。

松澤:また、会員様がキャリアを築いていく上でのアドバイザーやメンターとしての役割を果たす機能を提供できたら、「『ビズリーチ』を利用して転職して良かった」と思ってくださる方が、もっと増えるかもしれません。

萩野:アドバイザーやメンターの話が出ましたが、これから僕たちがするべきことの一つは、これまで一部の人しか手に入らなかったものをテクノロジーの力で民主化することだと思っています。例えば、これまでは、ティーチングやコーチングに長けた凄腕のヘッドハンターが一部の求職者にのみ提供していた体験を、「ビズリーチ」の全ての会員様に提供していく、というようなイメージです。

枝廣:もちろん、会員様の体験の質を向上する機能だけではなく、求人自動作成機能のように、企業様の体験の質を向上する機能も提供し続けていかなければいけません。そのために我々がするべきことは、世の中に一番求められているものが何であるかを見極め、社会的ニーズと技術的な進歩の両方を把握しながら、「ビズリーチ」を進化させ続けていくことです。

新井君を中心としたこのプロジェクトチームがまさにそうであるように、それを実現するためのチームがこの会社にはあって、そこに大きな志を持つメンバーが集まっています。これは、ビズリーチ社にとって大きな強みであり、こうした仲間たちの力があるからこそ、私たちは「『キャリアインフラ』になる」というビジョンを実現できるのだと思います。今回お話ししたレジュメ自動作成機能は、ビジョン実現のための一歩に過ぎませんので、これからも期待していただきたいです。


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この記事の執筆担当者

伊藤 友里/Ito Yuri
大学卒業後、株式会社ワコールに新卒入社。その後、JASDAQ上場の不動産会社、外資系IT企業の広報を担当。東日本大震災後、総合マーケティングコンサルティング会社にて、企業PR・ブランディングのコンサルタントを務め、2020年、株式会社ビズリーチへ入社。現在は、ホールディングス広報として、メディア運営、インターナルコミュニケーション、リスク・クライシスコミュニケーションの業務に従事している。


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