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Visionalが考える“デザインのチカラ“が経営にもたらす価値。ビズリーチ代表・酒井×CDO・田中の対談をお届けします。

この度、Visionalは、令和6年度の知財功労賞「特許庁長官表彰(デザイン経営企業)」を受賞しました。

「知財功労賞」(主催:経済産業省・特許庁)は、日本の知的財産権制度の発展・普及・啓発に貢献した個人、および、知的財産権制度を積極的に活用した企業等を表彰するものです。その中の表彰区分の一つである「デザイン経営企業」は、世界に通じる優れたデザインを生み出し、知的創造サイクルの実践に寄与した人材や、デザイン経営を取り入れながら知的財産を有効活用している企業に贈られます。

※Visionalの受賞のポイントは、こちら

今回は、株式会社ビズリーチ代表取締役社長の酒井哲也さん(トップ写真:右)と、執行役員CDO(Chief Design Officer)の田中裕一さん(トップ写真:左)の対談をお届けします。

経営、または、事業・組織の運営において、デザインのチカラが活用されている事例について、その活用の過程において感じた難しさや得た学びなどを含め、それぞれの観点を交えながら振り返りつつ、最後に、今後チャレンジしたいことを語ってもらいました。


プロフィール

酒井 哲也/Sakai Tetsuya
株式会社ビズリーチ 代表取締役社長
2003年、慶應義塾大学商学部卒業後、株式会社日本スポーツビジョンに入社。その後、株式会社リクルートキャリアで営業、事業開発を経て、中途採用領域の営業部門長などを務める。2015年11月、株式会社ビズリーチに入社し、ビズリーチ事業本部長、リクルーティングプラットフォーム統括本部長、取締役副社長などを歴任。2022年7月、株式会社ビズリーチ代表取締役社長に就任。2022年10月、ビジョナル株式会社取締役を兼任。

田中 裕一/Tanaka Yuichi
株式会社ビズリーチ 執行役員 CDO
通信販売会社でのEコマース事業立ち上げ、インターリンク株式会社での複数企業のプロジェクト推進を経て、2012年、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)に入社。Eコマース事業のデザイン統括、新規事業のプロダクトマネジメント、デザイン人事に従事。2017年、株式会社ビズリーチに入社。2018年、デザイン本部を組成し、デザイン本部長兼CDOに就任。2022年8月、プロダクト組織開発本部長に就任。その後、全社人事・管理機能の設計・推進を経て、2024年2月より現職。全社戦略実現のためのコミュニケーション設計・推進を中心に担う。


共創の場づくりを通して、事業・組織に新しい価値をもたらす。

──はじめに、現在のVisionalの経営や事業づくりにおけるデザインの位置付けについて教えてください。

田中:私たちは、デザインを事業や組織の成長のための一つの手段として位置付けています。大切なのは、デザイン、デザイナーを主語にして語るのではなく、事業や組織における課題を解決するための方法論としてデザインのチカラをはたらかせていくことだと思っています。

──2022年8月、デザイン組織を解体し、デザイナーが各事業部に入り込む体制に移行しました。各事業部・組織の内側からデザインのチカラをはたらかせていくことを「融ける“デザインのチカラ”」というキーワードで表現していますね。

田中:ビジネスシーンにおいては、ロジカルシンキングやシステムシンキングをはじめ、様々な課題解決の考え方があります。私たちは、デザインシンキングをその一つとして捉えていて、デザイナーに限らず、あらゆる職種や役割の仲間たちがデザインのチカラを活用できるようになるのが、「融ける“デザインのチカラ”」のゴールです。誰もがデザイン的アプローチを活用できるようになることで、これまで解決できなかった複雑な課題が解決できたり、次々と非連続な価値を生み出せる可能性が広がると信じています。

──経営、または、事業・組織の運営において、デザインのチカラが活用されている事例について教えてください。

田中:例の一つとして、プロダクトの新機能を開発する際などに制作するプロトタイプが挙げられます。一般的なプロダクト開発の考え方だと、プロダクトオーナーが要件を定義し、デザイナーがUIを作って、最終的にエンジニアが実装するというプロセスを踏みます。Visionalでは、ビジネス職とプロダクト職の仲間が近い位置にいて、それぞれが連携し合いながら共にプロダクト開発を進めています。

進め方の一つとして、まずはスピード優先で簡易的なプロトタイプを作って、それをもとに、「我々は、お客様にどのような価値を提供しようとしているのか?」「それはどう実現できるのか?」という議論を重ねながらお互いの目線を合わせていく。そして、お客様からいただいたフィードバックをもとにまた新しいプロトタイプを作る、ということもあります。

このようなサイクルを通して、「お客様の本質的課題解決」を実現し得る機能へと磨き込んでいきます。プロトタイプはあくまでも一つの例で、大切なのは、価値づくりの共通言語をみんなで共有して、洗練させていく共創の場づくりで、これはまさにデザインのチカラがはたらいている事例の一つと言えます。

田中裕一さん

──酒井さんは、今の話を聞いていかがですか?

酒井:一般的にデザインと言うと、バリューチェーン上の一番最後にアウトプットとして出てきたものの造形をイメージする人が多いかもしれません。私自身、この会社での数々の経験を通して、そこに至るまでのプロセスを整理したり、可視化したりすることもデザインが果たし得る大きな役割の一つであると知ることができました。普段から(田中)裕一さんとはこういった話をよくするのですが、デザインの対象を広く捉えた上で、その力を事業づくりや組織づくりに活かしている点は、この会社の素晴らしい特徴であり強みであると思っています。

田中:社内のコミュニケーションについても同じことが言えて、最近だと、「7つのプロフェッショナリズム」(株式会社ビズリーチの社員一人ひとりのプロフェッショナルとしての心得)の開発プロセスにおいてもデザインのチカラがはたらいています。世の中や、私たちが置かれているビジネス環境の変遷を踏まえつつ、これまで大切にしてきたこと、これから大切にしていきたいことを整理して、みんなで共通の認識を持ちながらストーリーを作り、言葉を磨き、ビジュアルイメージを作っていく。そしてそれを社内外に伝えていく。このプロセスも、先ほどのプロトタイプの話と同じで、みんなで一つの目的に向かって新しい価値を共創していく事例と言えます。

また、半年に一度開催する全社のキックオフも同じです。「我々は何を目指しているのか?」「どのような価値をお客様に提供しようとしているのか?」について、言葉や数値だけでは伝えきれないものを、形にしたり具現化することで社員全員が同じ認識を持てるように届けていく。そうしたものをつくり上げ、伝えていくプロセスにおいても、デザイナーが大きく関与しデザインのチカラをはたらかせています。

酒井:デザイナーが、それぞれのプロセスにおいて、みんなが頭の中で思っていることを一度アウトプットして、プロトタイプ的に絵やストーリーとして形にしてくれることで、議論が次に進んだり深まったりするシーンが何度もありました。こうしたプロセスからデザイナーが入っていることの価値はとても大きいと感じています。

田中:デザインができることを言葉で説明したとしても、きっとほとんどの方にとってはイメージが湧かないと思います。ただ、それぞれのプロジェクトの中で、デザインのチカラが活用されていく過程を実際に体験することで、関わった方々がその力を実感してくれる場面を見ることも多いです。「融ける“デザインのチカラ”」というテーマを掲げて以降、少しずつではありますが、そうした実感を持つ方がだんだんと増えてきているのではないかと思っています。

酒井:私は、MECE(漏れなく、ダブりなく)な形で整理したり、論理的に体系化して考えようとする思考の癖があるのですが、最近プロジェクトに入ってもらったデザイナーの方は、複雑な事象がある中で本質的なポイントをグッと掴んでストーリーを組み立てアウトプットをするというような方法をとっていて、私が想定していなかった切り口の提案をしてくれるので日々学ぶことが多いです。

田中:私なりに解釈すると、ビジネスシーンで用いられる思考プロセスには様々なものがある中で、酒井さんがおっしゃったのはロジカルシンキングのベースとなるツリー構造で、これは、「AはBとCで成り立っている。」「BはDとEで成り立っている。」というようにMECEな形で物事を整理していく考え方です。

一方、セミラティス型という考え方があって、これは、「AとBとCがあって、BとCには因果関係がある。」「Bを構成しているDとEは、Cがあるから存在している。」というように、いくつもの線が複雑に絡み合って立体化した物事の関係性を、どの側面から見るか、誰が見るか、という観点からリフレーミングしていく考え方です。セミラティス型においては、ロジックツリーでは表現できないような曖昧で質的な要素もあり、場合によっては、それこそが重要であるという考えを導き出すこともできます。

九州産業大学 芸術学部 ソーシャルデザイン学科 井上貢一研究室
「ツリー構造とセミラティス構造」 を参考に作成

酒井:デザイナーの皆さんとコミュニケーションを重ねる中で、最初は、「なぜ、そこにフォーカスが当たるんだろう?」と驚いたこともあったのですが、物事を綺麗に構造化することだけが全てではないと学ぶことができましたし、そうした物事の見方や切り取り方によって、これまでの私自身の考え方とはまた違うアウトプットに辿り着くこともあるかもしれないなと思いますね。このように、デザイナーの皆さんとコミュニケーションをする中で、自分自身の思考法をアップデートする上での良い投げかけをいただいており、とても感謝しています。

田中:もちろん、その逆もしかりで、デザイナーが、ビジネス職の皆さんやエンジニア・プロダクトマネージャーの皆さん、コーポレートの皆さんとの連携を通して学ぶこともたくさんあります。デザイナーが、自ら事業づくりの最前線に飛び込んでいくことによって、いろいろな事業づくりの観点を取り入れたり、ビジネスシーンのリアルを肌で感じることができますし、そうした学びは、職種の違いを越えて、みんなで一緒にデザインのチカラを最大限にはたらかせていく上での大きな手掛かりになります。

──ここまで、様々なプロジェクトのプロセスにおいてデザインのチカラが活用されている事例を聞いてきましたが、一方で、Visionalには、テレビCMや交通広告をはじめとしたクリエイティブにも強いこだわりをもって取り組んできた歴史があります。

田中:そうですね。そうしたコミュニケーションデザインの領域において、外部にアウトソーシングするのではなく内製にこだわる点も、この会社の大きな特徴だと思いますし、これまで長年にわたり築き上げてきたサービスのブランドを大切にするカルチャーが、社員に代々受け継がれていると強く感じます。

そして、それは単なる表面的な話ではなくて、例えば、「『ビズリーチ』って〜なサービスだから、〜な判断はしないよね。」といった言語化するのが難しいような共通認識をみんなが感覚的に持っていて、それを持ったまま大きく成長していることこそが、この会社の強みであり、これからも変わらずに大切にし続けていきたいことだと思っています。

酒井:ビジネスにおいて、その会社の競争優位性を明確に言語化できてしまったら、それは他社から模倣されてしまい、すぐに優位性は低くなってしまいます。逆に、裕一さんが説明してくれたように、ロジックでは説明できないけど、「〜こそが、私たちのサービスが大切にしたいことだよね。」という感覚は、完全には言語化できないもので、だからこそ他社から模倣されにくい。そうした唯一無二のブランド観を、一人ひとりの仲間が共通のものとして持てていることこそが、組織としてとても強い状態なのだと思っています。


酒井哲也さん


デザインのチカラによって、ビジョンの実現のために進むべき道を照らす。

──CDOの田中さんから見て、酒井さん自身がデザインのチカラを活用していると感じられるシーンがあれば教えてください。

田中:まず1つ目が、例えば、キックオフなどのプレゼンの場において、常に聞き手、つまり、ユーザーの体験を第一に考えていて、どう伝わるかということを大事にしている印象があります。まさに、私たちが掲げているデザイン・フィロソフィーの中にある「5つの約束」の「ユーザー中心」という考え方で、これをとてもナチュラルに体現されていると感じます。

2つ目が、先ほどの酒井さんの話にもあったように、常に学習と変化をし続けているという印象を持っています。仮説を立てて、検証して、そこから新しい学びを得る。学習のサイクルを回すというのはデザインの本懐だったりするのですが、それを自然と続けているのだと思います。酒井さんは、とてもこだわりが強い反面、目的を達成するために、日々新しいことを学びながら、学んだことを柔軟に取り入れて、自分自身をアップデートし続けているのだと思います。

3つ目が、最初の話と通じますが、共創する力をとても大切にされていると思っています。リーダーとして決める時はしっかりと決めつつ、いろいろな役割・強みを持つ仲間を集め、みんなを巻き込みながら共創のシナジーを生み出していく場づくりに非常に長けており、「7つのプロフェッショナリズム」やキックオフをはじめとした様々なシーンで、デザインのチカラをうまく活用されていると思っています。

酒井:プロジェクトの進め方に限らず、例えば、社内の会議体をどのように組み立てるか、という点も意識するようにしていて、何をどこで話すかの整理は、まさに社内コミュニケーションのデザインそのものだと思っています。だからこそ、いろいろとこだわりたくなってしまいます。

田中:今のお話は、まさに、デザインにおける「設計」の考え方で、改めて、デザイン的な考え方を自然と体現されているのだと感じます。

──デザインのチカラをはたらかせていく上で、お二人が感じた難しさ、もしくは、特に意識していることなどがあれば教えてください。

田中:事業会社の中でよくあるケースとして、デザイナーの生産性を定量的に可視化しようとする試みがあります。ただ、例えば、デザイナーが作ったUIの数などで行動量を可視化したり、デザインの品質向上による売上への貢献を算出したりしても、本質的な議論に繋がりにくいと思っています。

我々も最初の頃は、デザイナーの生産性や介在価値を説明する責任を果たす動きを進めようとしていたのですが、愚直に答えようとしても限界がある。そうした紆余曲折を経て、デザイナーの生産性をデザイン単体で考えるのではなく、課題と成果をもとに考えるという今の状態に至っています。今では、「課題を解決するために、どのような力を持つ人が必要なのか?」という視点で、経営や各組織で議論できているように感じます。

酒井:しっかりと課題解決・成果に繋がっているかを突き詰めることは、デザイナーに限った話ではなく、セールスやエンジニア、コーポレートをはじめとした他の職種においても大切なことです。その前提の上で、一人ひとりのデザイナーの貢献度合いをどのように証明していくかは、今も試行錯誤しながら進んでいる過程にいると思っています。

その上で私自身の体験を言うと、新機能のプロトタイプや「7つのプロフェッショナリズム」、キックオフをはじめ、いろいろなシーンにデザイナーが入ることによって、新しい価値ができあがるスピードが上がった、または、価値の幅や深さが増した、という感覚を、特にこの数年でより強く持てるようになってきています。

田中: いろいろなプロジェクトを通じて、一緒に事業づくり・組織づくりを進める皆さんに、デザインが介在することで生まれる新たな価値に気付いてもらったり、価値の広がりを感じてもらうことはすごく大切で、そのように一つずつ愚直にやっていくしかないと思っています。その意味で、Visionalもまだまだ道半ばです。

──最後に、今後チャレンジしていきたいことについて教えてください。

田中:これから我々は、ダイレクトリクルーティングのプラットフォームから「キャリアインフラ」へと大きく進化していく、つまり、いろいろな企業様の人事課題・採用課題を解決しながら人的資本経営を支援していく存在になっていくために、我々自身が変わり続けていかなければいけないし、今まで以上にお客様の期待を超える価値を提供し続けていかなければなりません。

そのためには、一つの方向に全員で向かっていける組織をつくっていかなければならないと思っています。組織が大きく成長していく過程においては、細分化・個別最適化が進む場面も一定はあると思いますが、今まで以上に大きな価値を発揮していくためには、酒井さんをトップにして一丸となる必要があります。「こういった課題を解決するんだ。」「お客様にこういう価値を届けるんだ。」というように、みんなで進むべき道を照らしていく上ではデザインのチカラを活かして推進できることが多くあると考えています。

今は、ビジネス、プロダクト、コーポレートというように大きな役割が分かれていますが、各役割の組織の中にポンっと入って、一つの集合体として共創できる組織にアップデートしていく。デザインのチカラを最大限にはたらかせて、そうした未来に進めていくことが、私の大きな挑戦の一つです。

酒井:会社の規模が大きくなり、同時に多様化が進んでいく中では、私が一つの言葉を発した時、そのメッセージの受け取り方やニュアンスの感じ取り方が、それぞれ異なるというケースも生じ得ると思っています。裕一さんが言うように、そのような中で、これから先大事になるのは、一つひとつの言葉や目指す方向や考え方など、大事にすべきことの意味合いを合わせていくことです。

一人ひとりがプロフェッショナリズムを持ちながら、みんなで一緒に同じ方向に前進していくために、デザイナーの皆さんには、ビジョンの実現のための道筋を高い解像度で共有し合うためにご自身の手腕を発揮してもらいたいと思っています。また、裕一さんが目指している「誰もがデザインのチカラを活用できる」組織になるために、デザインのチカラを実感できる共創の場づくりもぜひリードしていってほしいです。

私自身としても、事業づくり・組織づくりを今まで以上に大きく前に進めていくために、経営の立場からデザインのチカラを最大限にはたらかせられるように、できることを一つずつやっていくつもりです。


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この記事の執筆担当者

松本 侃士/Matsumoto Tsuyoshi
1991年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。2014年、音楽メディア企業に新卒入社し、音楽雑誌・ウェブサイトの編集や、採用などを経験。2018年、株式会社ビズリーチへ編集者として入社。現在は、ビジョナル株式会社の社長室で、Visionalグループ全体の採用マーケティング施策を担当している。


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