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多様な価値観を認め合うために。「育休とこれからの働き方」について語り合いました。

新型コロナウイルス禍を契機に広がったリモートワークは、業務面だけでなく、人々の家庭との向き合い方にも大きな影響を及ぼしています。Visionalグループもコロナ禍においてリモートワークの体制をとっていますが、社員の生活にはどのような変化が出ているのでしょうか。またそうした変化を受けて、これからの働き方についてどのように考えていくべきなのでしょうか。

今回、「育休とこれからの働き方」をテーマに、株式会社ビズリーチの副社長で自身も育休取得経験がある酒井哲也さんと、2021年に育休から復帰した東海林歩未さん、2018年に新卒入社した坂井悠太さんに座談会を開いていただきました。3者それぞれの立場から見える現状と課題とは、どのようなものなのでしょうか。

※トップ写真を含めた記事内の写真は、撮影時のみマスクを外して撮影を行なっています。


プロフィール

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酒井 哲也/Sakai Tetsuya
2003年、慶應義塾大学商学部卒業後、株式会社日本スポーツビジョンに入社。その後、株式会社リクルートキャリアで営業、事業開発を経て、中途採用領域の部門長などを務める。2015年11月、株式会社ビズリーチに入社。2017年より、ビズリーチ事業部 事業部長を務める。2020年2月より、取締役副社長に就任。2児の父で、次男の出産後1ヶ月の育休を取得。


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東海林 歩未/Toukairin Ayumi
2004年、筑波大学卒業後、受託開発を中心とするシステム開発の会社に入社。ソフトウェアエンジニアとして、Java・Oracle Database を使用したシステム開発を主に担当。2014年8月、株式会社ビズリーチに入社。「ビズリーチ」「キャリトレ」の開発を担当後、「ビズリーチ・キャンパス」の立ち上げを行なう。産休育休を経て2020年7月より、QA グループにて E2E テストの自動化を中心に活動。2019年から20年にかけ産休と育休を取得。


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坂井 悠太/Sakai Yuta
2018年、中央大学文学部卒業後、新卒で株式会社ビズリーチに入社。キャリトレ事業部でインサイドセールスやカスタマーサクセスを経験。2020年5月にHRMOS事業部のインサイドセールス部へ異動し、現在はHRMOS事業部のカスタマーサクセスとしてHRMOSユーザーの運用支援を担当。独身。


リモートワークで変化した働き方・家族との向き合い方。

──コロナ禍においてリモートワークの体制をとるなど、大きく働き方が変わりました。家庭・プライベートでの時間の使い方は変わりましたか。

酒井:7歳と2歳の子供がいますが、コロナの前から育児や家事を分担していたので大枠は変わっていません。ただ、「仕事があるから」「夜に会食があるから」といった理由で妻に代わりをお願いしてしまうケースが少なくなりましたね。物理的に家にいることが多くなったので、分担通りにできるようになった感じでしょうか。

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東海林:私は2019年の2月から産休に入って、その後4月から1年の育休をもらいました。2020年に復職する直前に緊急事態宣言になってしまったので、コロナ前と育児のしやすさを比べることはできませんが、通勤するのが当たり前だった状況と比べれば、子供の世話はしやすくなっているのだろうなと思います。

ただ、会社や職種などで大きな違いがあるのだろうなとも思います。2022年1月の時点で、夫は原則出社で勤務しているのですが、私は在宅ですので急な呼び出しの対応は私がすることになります。不公平ということを言いたいのではなく、これは「私も夫も出社」で想定していた分担の仕方とは異なり、「仕事にしても育児にしても、置かれた環境によってできることが大きく変わるんだな」ということを目の当たりにしている印象です。

坂井:僕は独身ということもあり、コロナによって生活が大きく変わったということはありません。でも仕事とプライベートの境目が分かりにくくなったなとは感じています。正直、忙しい時は延々と仕事してしまうこともありましたし、反対にそうでない時は、時間の使い方がルーズになってしまうこともありました。自分で自分をコントロールしなければいけないのは理解していますが、実はそれってものすごく大変なことだなと感じています。

一方で、たまに出社すると、すごく集中できたりするんですよね。そんなことがあると、家にいても「この時間はこれをやる」としっかり決めるとか、何か手段を講じる必要があるなと思います。個人の自己管理が試されるようになったと感じています。


自分で自分の時間をコントロールできない難しさ。

──東海林さんは復職の際、ご自身の希望で元とは違う部署に戻られました。実際に育児が始まった後の印象も含めて、どのようなお考えがあったのでしょうか。

東海林:育休中に身に染みたのは、「自分の時間が自分のコントロール下にない」ということです。もともと、ずっと起きていることはあまり苦ではないタイプなのですが、いつ、どうして泣くか分からない子供の相手は別物でしたね。特に産後数ヶ月は、心身ともに不調で、しかもその時期がいつ終わるかも分からず、「自分自身が安定していられない」ということを体験しました。1人ではとても乗り越えられなかっただろうと思います。

私はつい仕事にのめり込んでしまう方だと思っています。出産前はエンジニアとして、アプリ開発のマネージャーを担当していたのですが、前に進むことしか見えなくなるくらい夢中になることも多々ありました。でも育児のことを考えると、同じ仕事のやり方を続けていても良いのだろうかと思うようになりました。

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短期的には、自分が最も会社に貢献できるのは、元の部署で仕事をすることだったかもしれません。でもそうすると、過去のやり方に引っ張られてしまうかもしれない。あるいは、今は午前7時~午後4時の時間帯で働いているのですが、夜間の障害発生時の対応判断やチームで時間を合わせなければならない場合など、以前は当たり前のようにできていたことが、チームに負担をかけなければ難しくなるかもしれない。

だったらいったんこれまでの仕事と距離を置き、別の経験をしたり、アプリ開発業務を客観的に見られるようにしたほうが、気付きを得られ、キャリア全体の長いスパンで考えた時に良いのではと思いました。

酒井:「自分の時間が自分のコントロール下にない」というのはすごく分かります。個人的には、子育てに時間を割くこと自体はそれほどストレスではないのですが、その時間が不規則となるとものすごくストレスでした。

例えば、仕事のメールにすぐに返せないことがあるのは仕方ないと思えるのですが、「何時になったら返せるのか」がみえないのはとてもストレスになります。我が家の場合、僕は朝4時とか5時に起きるのですが、それ以降の対応は自分で、夜間の対応は妻といったふうに「時間帯での分担」が決まってから精神的に楽になりました。

坂井:僕もいつか結婚したいな、と思っています。「仕事だけ」というよりプライベートも大事にしながら過ごしていきたいと思っていて、育休などもできればとりたいと漠然と思っています。

でも同時に「キャリアに影響しないのか」といった不安もあります。結婚や子育てなどのタイミングを迎えたら、安心して家族のために時間を使えるかどうかは、職場を選ぶうえで非常に大きな要素になると思います。

酒井:どのような制度があるか、ということも大事ですが、それ以上に空気感が大事ですよね。ビズリーチには、「ママリーチ」「パパリーチ」のような育児をするパパ・ママのための社内コミュニティもあれば、LGBTQやダイバーシティに関する理解促進を目的とした「虹リーチ」もある。こうした活動が社員の皆さんの自主的な取り組みとしてあることは素晴らしいことだと思っています。多様性について考え、受け入れる文化があるかどうかが、結局は「安心」に繋がるものだと思いますね。

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東海林:それでいうと、私が「育休を取る」と言った時、周囲の方が「復帰はいつ頃の予定?」などと、復帰を前提にした言葉をかけてくれたのはすごく嬉しかったですね。

もともと働いている時から、そうした理解のある会社だと思っていましたけど、いざ取得するとなってネットで「育休 復帰」とかで検索すると、退職をほのめかされたりとか希望のキャリアが描けなくなったりとか、そんな情報も出てくるので、やはり不安を感じたこともありました。自分の会社がそうした不安を感じないで済む環境だったことはありがたかったです。


欠員は、突然の事故や病気でもあり得る。柔軟な組織運営は不可欠。

──世間一般的に、育休取得の際には、「周囲に業務的負荷がかかる」という考えが障壁になるということも指摘されています。酒井さんは、社長の多田(洋祐)さんが2020年に育休取得した際に1ヶ月間「社長代行」をされましたが、このあたりについてはどうお考えですか。

酒井:自分も含めてですが、現場で担当のお客様と向き合っている社員よりも、実際は経営メンバーの方が休みやすいと思いますよ。経営会議が定期的にあって、主な経営課題については日頃から共有されているわけですから。ものすごく重要な経営判断のタイミングは、天変地異などがなければ予め分かりますしね。連絡が全く取れなくなるわけではありませんし。

ただ役職とは関係なく全ての人に言えるのは、別に育休でなくても事故や病気、親の介護などの理由で急に欠員がでる、ということは常にあり得るわけです。しかもこの場合は十分な引き継ぎができるとも限りません。それと比べれば、育休は予定が見えていて、戻って来てもらう計算も立つ。それなのに対応できない組織だったらむしろ問題ですよね。

そういう意味では、産休や育休を取ってもらうことは、組織にとっても持続性や柔軟性を保つためにいいんじゃないですかね。事故や病気はそういうわけにはいきませんが、産休育休は基本的にはおめでたいことですから、取得者が出るというのは組織としても歓迎することでしょうね。

坂井:育休については、やはり社長の多田さんが取ったインパクトは大きかったです。「男性でも本当に遠慮なく取っていいんだ」というのが一気に伝わってきましたね。

今の酒井さんのお話で言えば、セールスの現場で働いていて、スキルや知見を属人化させないようにする会社の意志はすごく感じますね。トッププレーヤーのやり方を言語化・共有して、みんなが活かせるように工夫しており、そうした取り組みが、必要な時に遠慮なく「休める」という空気感づくりに繋がっているんだろうなと思っています。

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東海林:休業だけの話ではないなと思うのは、会社がどんどん成長して人が増えているじゃないですか。私も1年休んだだけでVisionalとして新しいスタートを切り、新しいメンバーがどんどん増えていていて。そういう組織だと、ノウハウが属人化してしまったら回らなくなっちゃいますもんね。

あと、新しい部署も当然分からないことだらけなんですが、知らない人でも気軽にオンラインで1on1を申し込みやすい雰囲気があることも大事だと思います。コロナ禍で顔を合わせる機会が少なくなったからこそ、この差は大きいのではないでしょうか。


「働きやすさ」と共に「成長の機会」を。

──ビズリーチをもっと働きやすい会社にするために、課題を挙げるとすればどのようなことでしょう。

酒井:逆説的ですが、「働きやすさ」ばかりに目がいって、甘い会社になってはいけないと思っています。会社の業績という意味でもそうですが、個人目線でも、厳しい場面を迎えた時にきちんと乗り越えて成長できる機会があるということも、働きやすさと同様に重要です。

冒頭でリモートワークの話が出ましたが、自分を律するということはこれまで以上に必要かつ重要になっています。オンラインのコミュニケーションが基本になって、細かな打ち合わせにもミーティングが設定されて、気付けばすぐにカレンダーが埋まるようになりました。それをこなしていくとなんとなく時間が過ぎ、仕事をした気になってしまいますが、逆に、予定がない空いた時間にこそ集中して何ができるかが大事になっていると思います。

一人ひとりにそうした意識をどのように持ってもらい、成長機会を見つけてもらうか。組織としてどのようにメッセージを出していくのかは、目下の課題だと思います。

東海林:先ほどの話に少し重なりますが、私は人材の育成が課題だと思います。組織が急拡大しているからこそ、質的にも量的にもマネージャーなどの管理職の重要性が高まっているように思います。

先ほどから話に出ているビズリーチの文化や空気感を維持するためには、その価値を理解し、チームのメンバーに浸透させられる人が必要です。コロナの影響もあってその難しさは高まっていると思いますが、酒井さんのお話にあった「成長機会の提供」といったことも含めて、しっかりとマネジメントできる人材を増やしていかなければいけないだろうと感じていますね。

坂井:酒井さんのお話、すごく分かります。コロナ禍で定時という概念が薄まって「ここまでにこれをやる」という意識が希薄になったなと感じました。また自分の家で仕事をしていてふと手持ち無沙汰になると「このまま自分は成長しないのではないか」という不安を感じたりもします。

これではいけないと思って、マネージャーに仕事をもらいにいって、もらい過ぎたりということもありました。そうした時に、「自分自身のキャパシティを意外と分かっていなかったんだ」と感じる場面もありました。環境の変化に合わせてどのように働くか、まだ答えは出ていませんが試行錯誤しながら見つけていかなければと思っています。

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酒井:リモートワークにしても育休にしても、働き方や家庭の在り方が多様化してきたということなのだろうと思います。夫婦の形も家族の形もそれぞれ違う。そうした社会になってきた時に、企業として何ができるかということですよね。

様々なニーズにできるだけ対応できるように、いろいろな制度や仕組みを用意することはもちろん大事です。そして社員の皆さんが利用したいと思った時に、躊躇せずに使える空気があること。これも欠かせません。

ただ、もしかしたらそれ以上に大事なのは、「こんな制度が欲しい」「こんな仕組みがあったらいい」という声が上がる会社であり続けることかもしれません。個人のニーズが多様化・変化するなかで、企業が全てに応えるのは簡単なことではありませんし、企業としてのポリシーや大事にしたいことの優先順位から、応えられる、とも限りません。ただし、内部で声さえ上がれば、検討することができます。個人の多様な価値観や考えを理解し、対話し、社員に信頼してもらう。それが今の企業に求められていることかもしれません。


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この記事の執筆担当者

中川 雅之/Nakagawa Masayuki
2006年、神戸大学文学部を卒業後、株式会社日本経済新聞社に記者として入社。主に企業取材を担当する。2015年、『ニッポンの貧困 必要なのは「慈善」より「投資」』を出版。2021年4月、株式会社ビズリーチに入社。DX推進室でコンテンツ制作を担当。


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