5名のプロダクト組織本部長が語る「お客様とプロダクト」への想い。
2021年8月、Visionalグループは新年度を迎えました。今回は、株式会社ビズリーチのキックオフのコンテンツとしてオンライン開催された、プロダクト組織のパネルディスカッションの模様をお届けします。
今期から新しく組成されたプロダクト組織は、それぞれ異なる役割を持つ5つのプロダクト本部を束ねる組織です。今回のスピーカーは、安河内崇さん(プロダクト組織の管掌役員 兼 プロダクト組織開発本部 本部長)、外山英幸さん(リクルーティングプロダクト本部 本部長)、萩原崇さん(HRMOSプロダクト本部 本部長)、田中裕一さん(デザイン本部 本部長)、園田剛史さん(情報システム本部 本部長)です。
モデレーターは、神志那彩さん(デザイン本部デザインプログラムマネジメント室 室長)が務めました。
プロフィール
安河内 崇/Yasukouchi Takashi
千葉大学理学部卒業後、株式会社インクスエンジニアリングサービス(現:SOLIZE株式会社)に入社。その後、ヤフー株式会社や株式会社オデッセイで、プロジェクトマネージャーやエンジニアリングマネージャーを務める。2007年、弥生株式会社に入社し、弥生シリーズの再編(パッケージ製品リニューアル、クラウド製品立ち上げ)、IT基盤の変革(販売管理、顧客管理、コールセンターシステムの刷新)を推進し、2017年に取締役開発本部本部長兼顧客サービス本部本部長に就任。2018年からは株式会社Misocaの代表取締役社長も務める。2020年7月、株式会社ビズリーチに入社し、HRMOS事業部プロダクト統括部長を経て、2021年8月、取締役、および、プロダクト組織開発本部の本部長に就任。
外山 英幸/Toyama Hideyuki
2005年よりWeb制作会社でフルスタックエンジニアとして開発を担う。その後、フリーランスとしてNTTデータなどで開発・運用・保守を経験。2011年より株式会社BookLiveで、エンジニアマネージャーやアーキテクトとして、創業期から売り上げ100億円規模に至るまでのシステム開発を主導。2017年より株式会社ビズリーチで、キャリトレ事業部やビズリーチ事業部のプロダクト開発部長を歴任。2020年2月、執行役員、および、CTOに就任。
萩原 崇/Hagiwara Takashi
IT企業にてアプリケーションエンジニア、データベースエンジニア、コンサルタントなどを経験。2002年、株式会社ワークスアプリケーションズに入社し、大企業向けERPパッケージの開発責任者として既存プロダクトの拡販から新規プロダクトの立ち上げ、開発組織マネジメント、大規模顧客へのパッケージ導入に従事。その後、株式会社Donutsでのジョブカン開発責任者を経て、2021年4月、株式会社ビズリーチに入社。現在、HRMOSプロダクト本部本部長を務めている。
田中 裕一/Tanaka Yuichi
通信販売会社でのEコマース事業立ち上げ、インターリンク株式会社での複数企業のプロジェクト推進を経て、2012年、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)に入社。Eコマース事業のデザイン統括、新規事業のプロダクトマネジメント、デザイン人事に従事。2017年、株式会社ビズリーチに入社。2018年、デザイン本部を組成し、デザイン本部長兼CDOに就任。2020年2月、執行役員、および、CDOに就任。
園田 剛史/Sonoda Takeshi
2002年、芝浦工業大学システム工学部卒業後、富士フイルムソフトウエア株式会社に入社し、開発業務に従事。2004年より株式会社オプトで、法人向けWeb広告効果測定ツール等を開発。ビカム株式会社(現:株式会社メタップスワン)を経て、ビズリーチの創業準備期に参画。執行役員に就任後、「ビズリーチ」や新規事業の開発責任者などを歴任し、2020年2月、執行役員、および、CIOに就任。
神志那彩さん
(デザイン本部デザインプログラムマネジメント室 室長)
──このパートでは、「お客様とプロダクト」をテーマに、プロダクト組織を管掌する取締役の安河内さんと本部長の4名をお招きしております。まずはじめに、プロダクト組織が今期掲げている「お客様とプロダクト」というテーマについて説明をお願いします。
安河内:今回、プロダクト組織を管掌することになり、皆さんに共通のメッセージを発信したいと考えました。プロダクトとは、皆で考えて作って、そして皆で売ってサポートしていくものです。
セールス・マーケティング・カスタマーサクセス・バックオフィス、そしてデザイナーやエンジニアなど様々な方の視点や考え方があり、時には立場が異なるために、相反することもあると思っています。
それでも、全てに共通して言えることは、お客様にどのような価値を提供するのか、これに尽きると思っています。そのため、皆さんが立ち返る原点になるといいなと思い、お客様と私たちのありたい姿をまとめました。
安河内崇さん
(プロダクト組織の管掌役員 兼 プロダクト組織開発本部 本部長)
皆さんに最も大切にしてほしいことは、「お客様にどのような価値をお届けするのか」と問い続けることです。また、こうした考え方は、Visional Wayのバリュー「お客様の本質的課題解決」にもつながると思います。今日は、この内容を踏まえて、本部長の4名と一緒に「お客様とプロダクト」についてお話をしていきたいと思います。
──ではここから皆さんにお話を聞いていきたいと思います。一人ずつ「あなたにとっての『お客様とプロダクト』とは?」というテーマについて考えてきたことを教えてください。
安河内:私は、「共生」という言葉を選びました。この言葉には「お客様と共に生きる」というメッセージを込めております。
私は約20年ソフトウェアの業界におりますが、この業界には、ソフトウェアを導入することによって、必ずしもお客様の負担を減らせるとは限らないという現実があると思っています。ソフトウェアを導入・活用するために新しいトレーニングをする必要があったり、ソフトウェアにはできず人がやらないといけないこともあったりして、逆に業務が増えてしまうこともあります。
当然、法令など構造的なものを変えないと実現できないことも多々あります。しかし、お客様がプロダクトを利用する前・利用中・利用後の体験、つまり、導入から運用までのUXをトータルで提供していくことが大事だなと、これまでの経験から学んできました。
本来の業務に集中してもらうために、「いかに定形業務を簡単にしていくのか」「簡単なオペレーションに落とし込んでいくのか」が作り手としてのポイントです。そのためには、操作性や分かりやすさ・習熟感、達成感をUXで実現していくことが重要なので、私たちとしても今まで以上に技術やデザインを進化させていかないといけません。
前職では、それぞれが考える「私のUX」を発表し合うレビュー会をやってきました。そうした場を重ね、社員一人一人がUXについて考え抜くことで、お客様と一緒に成長してこれたのではないかと感じています。この経験から、今回「共生」という言葉を選びました。
外山:一つ質問させてください。今回、安河内さんのような法人向けのプロダクトに関わってきた経験の豊富な方が取締役として就任されたことは非常に大きな意味があると感じているのですが、安河内さんから見て、「HRMOS(ハーモス)」をより良くするためのポイントを一つ挙げるとしたら、何になりますか?
安河内:「HRMOS」に関して言いますと、「One HRMOS」という言葉を掲げています。私たちとしては、採用・タレントマネジメントなどの区切りを作っていますが、お客様から見た時には「HRMOS」は一つのプロダクトとして見えています。だからこそ、お客様の成功体験を一つにつないでいくことが重要となります。現在、「One HRMOS」を掲げ、その実現に向けて取り組んでいることです。
──「HRMOS」の話が出ましたが、続いて、HRMOSプロダクト本部の萩原さん、「お客様とプロダクト」についての考えを聞かせてください。
萩原:「お客様と共に成長していく」という安河内さんのお話とほぼ同じなのですが、私が大切にしたい言葉は「同志」ですね。
これまで、ご提案のタイミングやトラブル対応などでいろいろなお客様とお会いしてきましたが、そのなかですごく印象に残っている言葉があります。それは、「システムは、業務に追い付いていなくても、逆に、業務の先を行き過ぎていても良くない。常に、業務の一歩先をサポートし続けてくれるプロダクトが欲しい。」というお言葉です。
良いものや新しいものを作ることも大事ですが、お客様と向き合って目の前の課題を解決できているかどうかも改めて大事だと思った出来事でした。既に弊社のプロダクトをご利用いただいているお客様、これから新規でご利用いただくお客様も含めて、お客様が向き合う課題の本質を問い続けながら、良いプロダクトを作っていきたいです。
そして時に、お客様を驚かせるような体験を提供していく、そうしたプロダクト作りを目指していきたいと思います。このような意味を込めて、「同志」という言葉を選びました。
園田:「一歩先を行く」というお話は、私としても納得感があります。昔、何年も前ですが、ビズリーチ事業を担当していた時に、先進的な使い方をされているお客様に合わせてシステムを作ったら全然使っていただけず、痛い思いをしたことがありました。
そうした経験もあり、お客様は何を求めていて、どのような機能を提供すればいいのか問い続けることは、すごく重要だと思いました。「同志」という言葉も非常に納得感があって、安河内さんの「共生」にもつながると思いますが、萩原さんがHRMOS事業部に来て、「同志」という観点で足りないところがあれば、何か教えていただきたいです。
萩原:足りないところはたくさんありますが、その一方で、プロダクトとして成長し続けていますし、新しく実現できていることもたくさんあります。そのなかで一つ課題を挙げるとすると、今HRMOS事業部が目指している理想は、仮説を立てることが難しく、「お客様の本質的課題解決」を実現するためには、トライ&エラーを繰り返していかないといけないものなんですね。
そうした時に、自社が一番の顧客、一番の「同志」となって、「HRMOS」を活用していかないと、このプロダクトは良いものになっていかないと思っています。これからは今まで以上に人事との連携を深め、自社での活用を進めていきたいと思っています。
萩原崇さん
(HRMOSプロダクト本部 本部長/写真左)
田中裕一さん
(デザイン本部 本部長/写真右)
──続いて、デザイン本部の田中さんにお伺いできればと思います。田中さんにとっての「お客様とプロダクト」とはどのようなものでしょうか?
田中:私は、プロダクトとは「お客様の心を動かすもの」であると考えています。これは何なのかというと、お客様の期待を超え続けることなのかなと感じております。
前職時代、長い間Eコマース事業に携わっておりまして、ECサイトを運営したり、プラットフォームとしてお客様と向き合うなかで感じたことは、プロダクトはお客様との対話のツールでもあり、接客のツールでもあり、成功を実現させるための価値そのものかなと感じております。
だからこそ、お客様が求めていることを良い意味で裏切るような、期待を超え、感動を生み出すものである必要があります。これこそが、お客様からプロダクトを選んでいただく理由、使い続けていただく理由になると思います。
私たちはプロダクトの会社であるからこそ、そうした状態を実現していきたいですし、これを実現していくためには、これまで以上にプロダクトに関わる全ての人たちが徹底的にお客様を理解して、お客様の成功を想像して、お客様のためにプロダクトを作り続けることが必要だと思っています。
そのために、プロダクトチームがより一体となって、お客様に向き合う力を強めていきたいです。また、お客様に向き合っているセールス・カスタマーサクセスの皆さまとこれまで以上に連携を深めながらプロダクトを作り、届け続けていきたいと思います。
萩原:「心を動かす」ってすごく素敵で素晴らしいことだと思います。一方で、そうしたプロダクトを実現することってすごく難しいですよね。その実現に向け、今期、田中さんとして取り組んでいくことについてお聞きしたいです。
田中:まさに、お客様の「心を動かす」ことは、とても難しいことですよね。お客様の言葉を鵜呑みにするだけでは、「心を動かす」という状態は実現できないと思うので、やはり、プロダクトチームがお客様に向き合う時間や機会を、どのようにして今以上に創出していくかが重要だと考えています。
今期は、デザイン組織として、お客様と社内の仲間たちの橋渡しになれるよう、デザインの力で課題発見・解決のプロセスを導き、そのプロセスを改善し続けていきたいと思います。
──私もデザイン本部の一人なので、デザイナーと協力していけたらと思います。続いて、外山さん、「プロダクトとお客様」についてどのようにお考えですか?
外山英幸さん
(リクルーティングプロダクト本部 本部長)
外山:私にとってプロダクトとは、「多様なお客様の生活や成長を支えるもの」です。弊社の代表的なプロダクトである「ビズリーチ」では特に難しさを感じていまして、企業様と会員様では、時に、それぞれが求める価値が相反することがあります。
企業様向けのビジネスにおいては、お客様の業務内容を深く理解し、どのようなソリューションを提供し、伴走できるかが大切ですし、突き詰めると「共に経営する」というところまで至ると考えています。そして、経営の状態というのは各社本当に様々です。
一方、会員様向けのビジネスにおいては、課題自体が、会員様一人一人のライフステージ、経験などの個々の要素に大きく左右されます。そのため、多様な状態に合わせた価値の提供が必要だと考えています。
企業様・会員様の様々な課題の組み合わせがあるなかで、私たちが実現を目指すキャリアインフラ構想は、全てのお客様のキャリアの礎となる非常に壮大な構想だと考えています。そうした多様な価値提供を行うプラットフォームの構築には、テクノロジーの力が必要なのですが、お客様の体験において大切なUI・UXを司るのはデザインの力です。
だからこそ、プロダクトの成長においては、デザインとテクノロジーの融和がマストになると考えています。田中さんのデザイン本部と、今まで以上に連携を深めていくことが何より重要だと考えています。
田中:本当におっしゃる通りで、今後キャリアインフラを実現していくうえでは、いろいろなセグメントのお客様がいらっしゃいますし、それぞれが抱えている課題や求める価値が異なっているなかで、技術とデザインがこれまで以上に一体となって、お客様の課題と向き合うことが求められるのではないかと思っています。
また、先ほどの話にも重なりますが、エンジニアの仲間、ビジネス開発の仲間のそれぞれのスペシャリティをつないでいく役割として、デザインをはたらかせていきたいと思います。
同時に、日々お客様に向き合っているセールスの皆さま・カスタマーサクセスの皆さまが一番お客様のことを理解していると思うので、私たち自身、皆さんからもっともっと学んでいかなければと思っています。
一点、外山さんに質問なのですが、これからエンジニアやデザイナーの連携を深め、調和・融合を進めていくなかで、一人一人のデザイナーやエンジニアに求めることがあれば伺いたいです。
外山:やっぱりエンジニアから見て、デザイナーってかっこいいんですよね。憧れる部分が多いといいますか、センスが必要な印象があって。エンジニア・デザイナーと区分して考えていることが多いなと思うのですが、ただ、デザイン思考のような本質的な考え方は、エンジニア・デザイナーに共通して求められると考えています。
専門職としての入り口は異なっているものの、プロダクトに対する経験が高まれば高まるほど似通ってくると思っています。だからこそ、お互いにもっと協力し学び合いながら、一緒にお客様に向き合っていけたらと思います。
究極的には、キャリアパスとしてもクロスできたらいいなと思いますが、それはとても壮大な計画になるなと考えています。
──最後に、情報システム本部の園田さんにお伺いしたいと思っています。「お客様とプロダクト」について、どのように考えていますか?
園田剛史さん
(情報システム本部 本部長)
園田:私はプロダクトとは、お客様の「満足度を引き出し、成長を支えるもの」と考えました。今期から私は、情報システム・基幹システムを担当させていただきます。これまでのお話では、顧客は誰かと考えると、社外のお客様や会員様を指していたと思いますが、私たちにとって最も身近なお客様は、このパネルディスカッションをご覧いただいている社員の皆さんです。
私たちの役割は、皆さんの満足度と業務の効率を引き出すことです。業務をシステム化するのは当然ですが、そこから更に進んで、ミスの軽減や業務の効率化を実現することで、事業づくりを支えていくことが真の役割だと思っています。最終的には、弊社のプロダクトをご利用いただいている外部のお客様への価値提供につながるのではないかと考えています。
ただ現状、弊社の基幹システムが満足度を引き出せているか、業務を効率化できているかと言うと、まだまだそうではないかと思っていて、ご迷惑をかけしてしまうこともあり、大変申し訳なく思っています。
これまでは会社が急成長してきたので、その時々を乗り切るためにシステム構築をしてきてしまった背景もあり、現状、まだまだ基幹システムに改善の余地があるのも事実です。もう言い訳はできないので、より効率的に、より本質的に使いやすいものを考えて、事業や会社のロードマップを意識しながら、価値あることを一つずつやっていきたいと思います。
安河内:園田さんのお話にあったように、基幹システムはすごく重要で、人間でいうと、骨・血管・臓器のような役割を担っていると思っています。
総称としてプロダクトと呼んでいますが、私からすると、作るものの対象は全てプロダクトです。当然、基幹システムも含まれていますし、会社の現状を維持するというよりも、事業の一歩先・二歩先を考えてあらかじめ作っておかないといけないものですので、会社を持続可能なものにしていくという意味でなくてはならないものです。
今回、取締役の役割として、当然基幹システムとして必要なロードマップを作ること、そして、実行していくことも入れています。ここは園田さんと一緒に、泥臭く取り組んでいかなければならないと思っています。
関連記事
この記事の執筆担当者
森嶋 麻友/Morishima Mayu
静岡県出身。スマートフォンアプリを開発するスタートアップにて、管理部門立ち上げを経験した後に、2017年、株式会社ビズリーチへ入社。採用組織にて、ソーサーグループの立ち上げを経験し、エンジニア採用の母集団形成を担当。現在は、人事本部人財採用部にて、テックブランディングなどを担当している。
「VISIONAL ENGINEERING」Twitterアカウントは、こちら。
「ALL VISIONAL」Twitterアカウントは、こちら。