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事業にとって真に価値ある知財活動を、各事業部の仲間を巻き込みながら推進し続けていく。知的財産グループ発足から3年、今後の展望を語る。

この記事では、法務室の知的財産グループの取り組みについて紹介します。

知的財産グループ(以下、知財グループ)は、Visionalの事業づくりにおける知財の重要性の高まりを受け、2021年8月に法務室の中に発足した組織です。「事業のための知財」という組織としての価値観を掲げ、グループにおいて全方位的に知財業務を担っています。

※知財グループの取り組みについてまとめた記事(2023年6月公開)

今回は、2022年8月に知財グループにジョインした米谷仁矩さん(トップ写真:中央)、法務室室長の小田将司さん(トップ写真:左)、そして、業務委託として参画してくださっている弁護士の伊藤雅浩さん(トップ写真:右)にインタビューを行いました。発足から3年が経ち、新しいフェーズに突入した知財グループの今後の展望などについて聞きました。


プロフィール

米谷 仁矩/Yoneya Masanori
北海道大学工学部卒業後、2010年に三菱重工業株式会社に入社し、様々な事業の知財戦略策定、国内外の特許・商標出願・権利化、模倣品対策、紛争対応、知財デューデリジェンスなどのM&A対応、海外グループ会社の知財業務支援などに幅広く従事。2012年に弁理士資格を取得。2017年に米国ジョージワシントン大学ロースクールに留学し、法学修士号(知財専攻)を取得。2022年8月、ビジョナル株式会社 管理本部 法務室 知的財産グループにジョイン。

小田 将司/Oda Masashi
2007年、東京大学法学部卒業。2008年より西村あさひ法律事務所で、M&A業務やクロスボーダー企業法務に従事。2014年には三菱商事株式会社法務部に出向し、自動車・船舶・産業用機械に関するビジネスの海外展開を法務戦略面で支援。2015年、英国ケンブリッジ大学にて経営学修士課程(MBA)を履修。2016年、株式会社ビズリーチ入社。セールス・組織開発などに携わった後、2020年2月より、法務室室長を務める。2021年8月、ビジョナル株式会社法務室室長に就任。2022年8月より、ビジョナル株式会社人事労務室・ガバナンス室の室長を兼務。

伊藤 雅浩/Ito Masahiro
弁護士(東京弁護士会)。1996年、名古屋大学大学院工学研究科情報工学修了。アクセンチュア株式会社等において、SAP R/3等の導入企画、設計、開発、運用、プロジェクトマネジメントに従事。2008年、弁護士登録。2017年、シティライツ法律事務所に入所。システム開発現場、コンサルティングビジネスの経験に基づくシステム開発、障害に関する紛争処理、ソフトウェア知財・法務が専門。2020年9月より、Visionalの知財業務をサポート。


米谷仁矩さん(写真:左)
小田将司さん(写真:右奥)
伊藤雅浩さん(写真:右手前)


各事業部の仲間を少しずつ巻き込みながら、一緒に走り続けてきた最初の3年間。

──はじめに、知財グループについての説明をお願いします。

米谷:2021年に法務室内にグループとして発足した時から、一貫して「事業のための知財」という価値観を掲げながら、Visionalの全事業の知財活動を担っています。それぞれの事業の規模、フェーズ、向き合っているリスクなどのバランスを見ながら、Visional全体として最適になるように意識しながら活動しています。

所掌する事業の数が多いだけでなく、それぞれの事業の領域が大きく異なり、変化も激しい環境で、各事業に合った知財活動を自ら考え推進できるところが、Visionalの知財活動の面白さだと思っています。

また、知財をVisionalの文化として定着させるための社内の広報活動にも力を入れています。Slackで社内報「知財NEWS」を発信したり、月に一度、ランチの時間に開催されている社内のオンラインイベント「All Visional+」に出演して南(壮一郎)さん(Visional代表)と知財活動について対談したり、また、昨年は初の試みとして、グループ横断の知財表彰イベント「Visional IP Awards」を開催しました。

──どのような想いがあって、社内の広報活動に注力し始めたのでしょうか?

米谷:知財活動は、知財グループだけでは進めることはできず、各事業部の皆さんから「こういう新機能を開発している。」「こういう新しい商品名を検討している。」といった話をタイムリーに共有してもらうなど、事業の皆さんに協力いただくことが不可欠です。なので、皆さんとの関係性を構築し、連携を密にしていくために、まずは、皆さんに「知財とは何か?」「なぜ、知財が事業にとって大切なのか?」という理解を得てもらうことが大切です。

当然ですが、最初は皆さん、知財について知らないことばかりで、興味も薄い状態ですので、我々が受け身の姿勢で待っているだけでは何も始まりません。そこで、知財グループから能動的に、知財にまつわる様々な発信やイベントの開催を始めました。

もともとVisionalは、モノづくりやデザイン、ブランドを大切にし続けてきた会社で、また、その共通認識をみんなが持っているので、あとはそれを守る手段として特許や商標があり、事業の成長を後押しする武器になるんだよ、ということを我々が示し、一つひとつの知財活動を通して信頼を深めていけば、おのずと知財が文化として浸透していくだろうと考えました。

──伊藤さんは、この3年間の知財グループの成長、活躍をどのように見ていますか?

伊藤:想像以上のスピードで実績を出されているという印象です。組織の立ち上げについて、0から1、1から10にするのが大変という話がよくありますが、そこをこの3年間で一気に駆け抜けたんじゃないかなと思いますね。

また、先ほどの米谷さんのお話に通じますが、私が各事業部の方と一緒に打ち合わせをしたり、時には一緒に飲みに行ったりすると、皆さんの知財への親しみや興味関心を非常に感じるんです。この規模の会社でこうした文化が根付いているところをあまり他に知らないので、 そういう意味ではすごく特殊な飛躍をしているのだと感じます。

──先ほどの米谷さんのお話にあったように、各事業部の皆さんとの繋がり、信頼関係は、知財活動を進めていく上でとても大事になりますよね。

伊藤:間違いなくそうですね。日々、新しいアイデア、新しい機能が次々と生まれていますが、もし、その時に知財グループに声がかからないと、知財でそのアイデアや機能を守ることができなくなってしまいます。ただ、この数年間を通して、各事業部と知財グループの繋がりがとても深くなったと感じます。

また、単に事業部から知財グループに相談が来るようになっただけではなく、逆に、サービスや機能の開発段階で、知財グループから事業部に積極的に提案や質問をしていて、そうした相互のコミュニケーションが事業部側にも良い影響を与えているケースも増えています。新しく考えたものを特許化してほしい、といった単なる一方通行な関係性ではなく、各事業部の皆さんから、一緒にモノをつくりあげている仲間として見てもらえてるような気がします。

各事業部の方たちがとても良い人ばかりで、「事業のため」という認識が揃えば、率先して知財活動に協力してくれる方が多いです。こうしたVisionalのカルチャーは本当に素晴らしいと思いますし、こうしたカルチャーがあったからこそ、この3年間で知財グループが大きく成長できたのではないかと感じています。

──小田さんは、設立からの3年間の知財グループの成長をどのように見ていますか?

小田:よく思うのは、一つひとつの取り組みの質が極めて高いんですよね。何事も徹底的にこだわり抜いてやってくれていると思いますし、また、それだけでなく、非常に速い。僕は、知財グループが今のフェーズに至るまでに、立ち上げから5年くらいはかかるだろうと思っていたのですが、3年経った今の時点で、当初の想定を超えてさらに先のフェーズへ至っている。これはとてもすごいことだと思います。

米谷:ありがとうございます。大企業のように、特許を年間何百件、何千件も出願できるわけではないので、1件たりとも無駄にしないよう、質にこだわって知財活動を進めています。

また、スピードについては、例えば、特許が取れるかどうかは早い者勝ちなので、新たなアイデアが生まれてから特許出願までは、早ければ早いほど良い。たった1日、特許出願が遅れてしまったことで、他社に権利を取られてしまうケースも実際にあります。そのようなこともあり、知財活動においては、何事もなるべく速い行動を意識しています。

実際の特許の出願書類は、事業部の皆さんからしたら非常に読みにくいし、特許の質の良し悪しって実感しにくいと思うのですが、一つひとつの知財活動のスピードは、誰から見ても分かりやすい指標になるので、事業部の皆さんに知財グループの価値を感じてもらいやすい部分だと思います。事業部の皆さんから事業の一員として信頼してもらうためにも、知財のプロフェッショナルとして質をしっかり担保した上で、スピード感をもって知財活動を進めることが大事だと思っています。

米谷仁矩さん

──知財グループの立ち上げから3年が経ち、4年目に突入しましたが、この数年間における社内の変化などがあれば教えてください。

米谷:例えば、私がジョインした2年前は、特許に携わったことのあるプロダクト組織の方は多くなかったのですが、今では、多くの方が「これって特許にならないかな?」と日々の開発の中で考えてくれていて、どんどん我々に提案してくれるようになりました。またそれだけではなく、プレスリリースなどで特許技術であることをPRするなど、様々な場面で我々と連携してくれる方も増えてきて、知財にはいろいろな可能性があることが次第に広く伝わってきているのだと思います。

──その一つの結実として開催されたのが、昨年11月の「Visional IP Awards」だったと思います。

米谷:そうですね。グループ横断で表彰をして、たくさんの仲間に広めたいと思える事例が数多く生まれたこと、そして、表彰式に参加者として見に来てくれた人が100人近くもいたことは、企画・運営した身としてとても感慨深かったです。

──小田さんは、知財グループが立ち上げる前と、立ち上がってから3年が経った今を比べてみた時に、どのような変化を感じていますか? 

小田:知財グループが立ち上がる前までも、一部の事業で特許を出したことがあったのですが、社内からの「なぜ特許って必要なんですか?」という疑問に対して私自身しっかりと答えられていなかったんです。件数を出せていないとか、スピードが遅いとか、そういうことの以前に、当時は、知財の価値を社内に正しく説明することができていなかった。

知財グループができてからは、特許の数が増え、また、知財を有効活用する事例も増えて、並行して社内の啓蒙活動も進める中で、次第に、知財の重要性を理解してくれる人が各事業に現れ、興味を持ち始めてくれたことで、知財活動のスケールが少しずつ広がっていきました。はじめは知財に対して疑問を抱いていた人が、少しずつ「知財によって事業を成長させることができるかもしれない。」という予感を抱くようになり、やがてそれが確信に変わっていく。そうした事業部の仲間たちが、この3年間でとても増えてきているように思います。


「知財は事業の成長に繋がる」という確信を、今まで以上にグループ内に広めていく。

──4年目に突入しましたが、小田さんが知財グループに期待していることについて教えてください。

小田:先ほどの、予感から確信に変わった人が増え始めているという話は、各事業部の一部のキーパーソンなどを指していて、実際にそうした人が増えていることは間違いないのですが、各事業部に所属する全員の意識がそこまで達しているかと言われれば、まだまだだと思っています。

私が今後の知財グループに期待するのは、特許を持つことがどのような価値に繋がるかについて、今まで以上に広く深く各事業部の皆さんや経営メンバーに示していくことです。つまり、価値の具現化ですね。

ともすれば特許は、何かあった時の保険と思われかねない。「何かあった時のために伝家の宝刀をいっぱい持っているんです。」と説明することもできますが、知財は価値があるものであるという確信がない人は、結局「その宝刀は何のために持ってるんだよ。」「そのためにどれだけコストをかけるんだよ。」という疑問を抱いてしまう。振るうことのない伝家の宝刀ではなくて、実際に事業の成長のためになるものであることを、今まで以上に多くの人に実感してもらう必要があると思っています。

小田将司さん(写真:左)
伊藤雅浩さん(写真:右)

伊藤:特許や商標の件数などは外部からも調べることができるので、最近Visionalが知財活動に注力していることは外からも見えます。そうなると他社からマークされることが増えるでしょうし、場合によっては争いも起きかねない。もちろん、伝家の宝刀を抜いて戦うことも特許が価値を発揮する手段の一つですが、それだけではなく、例えば、数字としては表れにくいのですが、特許技術であることをPRすることで他社を牽制したりというように、小田さんのおっしゃる価値を具現化するシーンは、これから今まで以上に増えていくかもしれないと思っています。

米谷:小田さん、伊藤さんが言ってくれたように、知財にまつわる疑問や予感を、確信に変えるために何をしていくかが大事で、知財が事業に役立った実績を示していくことが必要だと思います。

知財グループができてからの3年間で、事業にとって大事な技術やブランドを知財で守る文化がどんどん広まってきていますが、知財組織・活動としてはまだまだ立ち上げのフェーズです。Visionalでは、事業の成長・変化に伴い、世の中の課題を解決する新たなアイデアが次々と生まれてきますので、それを守っていく知財活動も、質・量ともに進化していく必要があります。

また、知財業務の仕組み化や標準化も必要ですし、これまで獲得してきた権利を活用していく取り組みも必要だと考えています。まだまだ知財組織としては未熟ですので、これから発展・進化していく余地は非常に大きいと思います。

──知財グループは、日々の知財活動と並行して、今後の組織拡大のための仲間づくりにも注力しています。最後に、どのような方と一緒に働きたいかについて教えてください。

米谷:大前提、「事業のための知財」という我々が大切にし続けている価値観に共感してくださる方と一緒に働きたいと思っています。特許を出願して権利化することは、もちろん事業のために必要な知財活動ですが、我々が価値発揮できる領域はそれだけではないと思いますし、事業のために知財でできることは全部やっていかなければいけません。だからこそ、事業の成長に繋がる知財活動を自ら考え実行し、次々と新しいチャレンジをしていけるような方と一緒に働けたら嬉しいと思っています。

小田:今の話と重なりますが、新しくジョインしていただく方には、伝統的な知財部門の在り方や方法論に固執することなく、新しいチャレンジを重ね続けてほしいと思っています。まさにVisionalらしさに繋がる話かもしれませんが、事業にとって本質的な価値が何であるか、徹底的に問い続け、行動に移し続けてほしい。4年目に突入しましたが、これからが知財「組織」としての腕の見せ所であり、成すべきことはたくさんあります。

米谷:これまでの3年間を通して築き上げた知財活動の土台を活かしつつも、会社も事業も日々変化し続けていくので、それが今のフェーズとは合わないねとなったら、状況に合った形に全部作り変えればいいと思いますし、それぐらい自由に何事にもチャレンジできる環境だと思います。

──伊藤さんから見て、今の知財グループで働くことで得られる経験ややりがいについて、どのように考えていますか? 

伊藤:これはすごくクリアで、私はこれまでたくさんの法務や知財の担当者に会ってきましたが、その中でも米谷さんは抜群に仕事ができる方だと思っています。なかなかうまく言葉にして説明するのが難しいのですが、まず、米谷さんと一緒に働けることが大きな価値だと思います。

また、先ほどの小田さんのお話に通じますが、今のVisionalの知財グループは、0ではないけれど、まだまだやるべきことがたくさんあるというフェーズです。その分、チャレンジしがいがあるし、たった一人で組織を0から立ち上げるのではなく、米谷さんや小田さんをはじめとした法務室の皆さんなど、とても頼もしい仲間に囲まれています。仲間と連携しながら大きな価値を生み出すことが好きな方にとっては、とてもマッチする環境だと思います。

米谷:ありがとうございます。私の観点から言うと、私がVisionalの知財グループに入った大きな理由の一つに、豊富な経験をお持ちの伊藤さんや小田さんと一緒に働けるから、という想いがありました。知財の実務の面では、日々悩む場面もありますが、いつでも伊藤さんや小田さんに相談できる環境があり非常に心強く、それが自分自身の成長に繋がっている実感もあります。

伊藤さんの言う通り、お二人以外にも、法務室には経験豊富な法務のプロフェッショナルが多くいます。人によっては、1人で0から組織を立ち上げていく環境を望まれるかもしれませんが、私としては、頼りになる仲間たちと連携しながら働ける環境が、とても自分に合っていると思います。

──これから先の数年を通して、どのような知財グループを築き上げたいと考えていますか?

米谷:数年後には、Visionalの皆さん全員が、知財は事業にとって価値があるという確信を抱いている状態を実現したいです。もちろん、その過程において、会社や事業は変わり続けていくはずです。Visionalのグループミッション「新しい可能性を、次々と。」にあるように、もしかしたら今後は、今の時点では考えもしない事業領域に挑戦しているかもしれないし、グローバルに関連する事業が成長しているかもしれない。そうした未来を見据えた時に、逆算して、それぞれの事業の成長を支えられるような強固、かつ、柔軟な体制を今から作っていかなければいけないと思っています。

Visionalは、これからも想像もできない未来に向けて変化し続けていくはずですが、知財としては、変化が起きる時は、今まで以上に大きく価値を発揮していくチャンスです。我々自身も日々学び続け、変わり続けながら、そうしたチャンスをしっかりと活かし、各事業部の皆さんから頼られ続けるような組織を、一緒に作っていきたいです。


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この記事の執筆担当者

松本 侃士/Matsumoto Tsuyoshi
1991年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。2014年、音楽メディア企業に新卒入社し、音楽雑誌・ウェブサイトの編集や、採用などを経験。2018年、株式会社ビズリーチへ編集者として入社。現在は、ビジョナル株式会社の社長室で、Visionalグループ全体の採用マーケティング施策を担当している。


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